時は夢のように・・・。「第三話(其の壱)」 (Page 3)
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あたる「つ・・次の交差点を、さ・・左折・・っ!!」
唯「左折ね。」
信じられないようなコーナリングで左折すると、目の前に友引高校が見えてきた。
唯「あとは直線か・・。」
グリっとアクセルを全開にすると、加速で前輪が浮き上がり、ウィリーしてしまった。
どんどん加速していく、さっきよりもっと速く感じられた。おそるおそるメーターを見ると、メーターの針は限界に達していた。
時速300km。
学校の正門まで500メートルくらいだけど、ワープした様な感じだった。
ギギギギギギギギギッッ!!!
正門手前でフルブレーキ。一気に減速したもんだから、勢いで後輪が浮き上がってしまった。
バイクが停止すると同時にストップウォッチのタイマーを止める。
唯「やったね♪ 3分12秒!」
あたる「お・・お見事・・・。」
ふらふらしながらバイクから降りてヘルメットを脱ぐ。
唯「大丈夫? お顔が真っ青だけど・・。」
あたる「は・・はははは・・。か・・カラーでお見せできなくて、残念ですぅ・・。」
唯はヘルメットを受け取るとカギホックにひっかけた。
唯「じゃあ、私、行くね。勉強頑張ってね!」
アクセルを何回かふかして、ホイルスピンしながら走り出して、あっという間に見えなくなった。
唯がいなくなって、すぐに、今度はラムが空からやってきた。
ラム「あれっダーリン?! お弁当取りに家まで戻ったんじゃなかったのけ?」
どうやら、唯のバイクはラムを追い越してしまっていたようだ。
あたる「あ・・あぁ・・。」
ラム「ダーリン、どうかしたっちゃ? 気分が悪そうだっちゃ。」
ラムが俺の顔を見るなり驚いた声を上げる。不調って事が一瞬で分かってしまうくらいだから、よほど顔色が悪いのだろう。
まだバイクに乗っている感じで、周りの風景がひどく歪んで見えるのだ。
ラム「もうすぐチャイムが鳴るっちゃ、さぁっ、ダーリン急ぐっちゃ!」
俺はラムに背中を押されて歩き出したが、2・3歩あるいた所でばったりと倒れてしまった。
*
授業はいつもの如くぶっ潰れた。理由は他愛の無い些細な事である。俺がしのぶに声をかけて、ラムがブチ切れ、面堂やメガネがラム
に加勢して、最後には止めに入った温泉マークを叩きのめして、ジ・エンド。今日も一日、終ぅ〜〜了ぉ〜〜〜。
・・とはいかなかった。朝、唯に送ってきてもらったにもかかわらず、遅刻してしまったのだ。
ラムに連れられて、時間ギリギリで教室にたどり着いたのだが、腹の底から込み上げてくるモノがあって、トイレに駆け込んだのだ。
朝のホームルームに間に合わず、結局、放課後の掃除当番になっちまった・・・。
俺は教室の窓を開けて、遠くの景色を眺めていた。どこもかしこも春の到来を感じさせる風景に変わっていた。
あたる「あ〜あ、春だなぁ。」
「何ボケたこと言ってんだよ、あたる。ほら、そいつやって。」
ぼーっと遠くを眺めて溜め息をついてると、黒板消しが飛んできた。
投げたのは俺の悪友の一人、パーマ。
パーマ「まったく、あたるが遅刻なんかすっからだぞ。罰掃除なんて、いまどき小学生でもあるめぇし。手伝ってやってんだから、早く
片付けちまおうぜ。」
あたる「はんっ。俺は別に手伝ってくれなんて・・・。」
パーマ「あ、そう。じゃあやめだ。」
そう言うと、パーマはくるりと向きを変えてすたすた歩き出した。
あたる「イヤだなぁ、パーマ君。冗談だよぉ、感謝してるって。」
俺は黒板の落書きを消し終えると、教室の後ろにあるクリーナーのスイッチを入れた。
ゴォーッ、ゴォーッ・・。チョークの粉を吸い取るクリーナーの音がうるさくて、周囲で何を言ってるのか聞こえなくなる。
パーマ「・・・・・・・のかよ、あたる。」
あたる「なに? なんか言ったかぁ、パーマ。」
パーマ「なんか隠してる事があるんじゃないかって聞いてんだよ。メガネも心配してたぞ。授業中、ボーっとしてたり、呼びかけても返
事しなかったりさぁ。遠くを眺めたり・・。絶対おかしいぞ! いつものあたるじゃない!」
ぎっくーーーっ!!
その時、ダダダダダッと足音がしたと思うと、教室の引き戸がいきなりガラっと開いた。
「おい、諸星! 諸星はおるかーっ!」
面堂終太郎だ。相変わらず捻たツラしおってからに・・。
面堂は俺たちが二人きりで教室の掃除をやってるのを見て、呆れ顔をした。
面堂「・・・キミたち、ナニ地味なことやっている。罰当番? 女子の更衣室でも覗いたか?」
パーマ「こいつ遅刻したろぉ、掃除当番にさせらちまったのさ。で、俺はラーメン一杯で手伝ってやってんの。」
あたる「ちょっ・・ちょっと待て! ラーメンどーのこーのは言っとらん!」
パーマ「あ、そう。じゃあ帰ろうか面堂。」
あたる「ぐぬぬぬぬ・・。足元見やがって・・。」
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