時は夢のように・・・。「第三話(其の壱)」 (Page 6)
Page: 01 02 03 04 05 06 07 08

 黒メガネが運転席に戻るなり、今度はすごい勢いで車が走り出して、あっという間に視界から消えた。
あたる「ほんっっとに気の毒だよな〜、またな面堂。にひひひひ・・。」
ラム「これで邪魔者はいなくなったっちゃね♪ ウチはやっぱり二人きりのデートがいいっちゃっ♪」
 満面の笑みでラム。しかし、俺にはどうもその笑顔が苦手だ。嫌いとかじゃなくて、なんかこう・・恥ずかしいのが大半で・・。まと
もにラムの顔が見られなくなってしまうのだ。困ってしまう。
あたる「で、デートじゃない、ただお茶するだけだ!」
ラム「どう違うっちゃ?」
あたる「ぜんぜん違わいっ!」
ラム「若い男女がお茶するのって、デートじゃないのけ?」
あたる「う、うるさいうるさい!」
 そんなこんなで、俺たちは気ままに喫茶店に足を向けた。まさか翌日、あんな騒ぎになるとは考えてもいなかったのだ。

                              *
 学校帰りに喫茶店に立ち寄った、その翌日のことだった。
 俺は学校の校門をくぐるなり、ラム親衛隊の手によって拉致され、時計塔の屋根裏部屋に連れ込まれた。

屋根裏部屋。
 部屋の中は薄暗くて、湿気も多く、ちょっとかび臭い。
 この部屋は、俺がラムとモメると、すぐ、ラム親衛隊によって投獄される場所だ。
あたる「パーマか・・。さてはチクリやがったな。」
 辺りを見渡すけど、明るい所からいきなり暗い部屋に放り込まれたので、目が慣れていないせいかよく見えない。
 じっと目を凝らして、人の気配がする方を凝視していると、聞きなれた声が部屋に広がった。
「あたるぅ〜〜。なぜここに連れて来られたか・・・分かってるな?」
 メガネだ。知っての通り、ラム親衛隊の最高権力者である。
あたる「どうせパーマがチクったんだろ? 勘違いするなメガネ。彼女は俺の親父の親友の娘さんで・・。」
 俺は誤解を懐かれないよう説明しようとしたが、途中でメガネが口を差し挟んだ。
メガネ「ああ、知ってる。何もかもパーマが白状してくれたよ。」
 変だ・・。俺はふと気付いた。やっと目が慣れて、ぼんやりとメガネの姿が見えてきた。他の二人の姿も確認できた。しかし、パーマ
の姿だけが見えないのだ。こいつらは四人で『ラム親衛隊』のはずだ。半端に行動するのは珍しい。
あたる「パーマはどうしたのだ?」
メガネ「パーマなら・・、お前の後ろにいるじゃないか。」
 クイっとあごをしゃくって指し示した。
あたる「な・・なに?」
 振り返るとそこには、手錠でつながれたパーマが居た。グッタリしてて完全にKOさせられている様子だ。
 隣にはアノ、サドヤマが居た。
メガネ「パーマは我等ラム親衛隊の法を犯したのだ! 許される事ではない! 万死に値する!!」
あたる「ぱ・・パーマ・・。」
 俺はパーマの元に駆け寄った。
パーマ「あ・・あたる・・。来てくれたのか・・。」
あたる「お前・・。」
 パカンっ☆○(-。- )o
 パーマの頭をグーで小突いた。
パーマ「ってーな!! 何すんだよ!!」
 パーマの胸ぐらを引っ掴んで、顔を突き合わした。
あたる「お前・・、よくもメガネ達にチクってくれたな!」
パーマ「ご、誤解するなあたる。俺は告げ口なんて・・・・するつもりは無かったんだけどね・・。」
あたる「話しちまったんじゃないか!」
パーマ「だから俺は・・!」
 今更どうでもいい話でイラついたのか、メガネが声を荒げた。
メガネ「おだまりぃぃっっ!!!」
 メガネの一喝で俺とパーマは黙り込んだ。
 辺りに一瞬静けさが広がった。
 メガネは眼鏡を外すと、息を吹きかけてからハンカチでレンズを拭いた。
メガネ「あたる、前にも同じような事があったな・・。どこぞの姫との結婚騒動の時だ、ちょうど一年前ぐらいか・・。あの時もお前を
    ここに連れて来たな・・。」
 メガネは眼鏡をかけ直し、人差し指でクイッとあげた。
メガネ「お前はいつまでたっても、俺たちの気持を理解できんようだ。一年経っても進歩しとらんなぁ・・・。俺たちラム親衛隊は、
    お前をどれほど憎んでいるか・・分かるか?」
あたる「・・・・。」
 俺はメガネの悲痛な魂のこもった言葉に、返事ができなかった。
メガネ「しかし、俺たちはお前への憎しみを堪えてきた・・・ずっっっとだ! ラムさんの為に! ラムさんの幸せの為にな! あの結婚騒
    動の時も、俺たちは最後の最後まで踏みにじられた気分だった、が、あの時はラムさんのあたるへの深い愛に殉じて、お前を許
    した・・。しかし、またしても貴様は・・っ!!」
あたる「誤解しているぞメガネ! パーマから聞いたんだろ?」
メガネ「黙れっ! お前というヤツは・・っ!!」
 メガネが声に詰まらせた時、黙っていた二人がセキを切ったように喋りだした。
チビ「あたるぅ! また俺たちをコケにすんのか?! もぉやめてくれよ!」

Page 5 Page 7
戻る
Page: 01 02 03 04 05 06 07 08