時は夢のように・・・。「第三話(其の壱)」 (Page 4)
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 俺はふところから財布を取り出して中身を確認した。もうすぐ破産しそうな経済情勢だ、本気で泣けてくる。
面堂「自業自得だな。」
 面堂は鼻で笑った。
あたる「面堂、俺に用があるのではないか? 何だよ?」
面堂「おおっ、そうだった・・・。」
 ゆっくりと振り返って背を向け、天井を見つめる面堂。
面堂「諸星・・、お前に一つ聞きたい事が・・・あるのだ!!」
 始めはゆっくりと温和に話していた面堂が急に声を荒げ、同時に、振り向きざまに刀を抜いて切りかかってきた。
あたる「どわあぁっ!」
 反射的に真剣白刃取りして、二人は固まった。
あたる「い・・いきなり何をするのだ面堂!」
面堂「貴様・・、ラムさんという女性がありながら、他の女性と共に生活しておるというのは、まことかぁっ!!」
 げーーーーっ!!
 なんで? どうして? どこでどうバレちまったんだ?
面堂「どうした諸星ぃ・・。動揺している様だなぁ〜〜っ! まさかとは思っていたが、正直に答えろ諸星ぃぃっ!!」
あたる「面堂! 落ち着かんか!」
パーマ「あたるぅ! てっ、てめぇっ! その話ホントなのかよ?!」
面堂「この学校の生徒で、木下という、少々気に入らないヤツなのだが、諸星の近くに住んでいるのだ、知っているか? そいつが生活指
   導に告げにきた。最近、超可愛い娘が諸星さんちに住んでいるとな、近所では評判らしいな。」
 俺は面堂の刀を力で押しのけて、焦った面持ちのまま大声で言った。
あたる「面堂、お前は『超』とかってゆうな。そんなキャラじゃないって。なんだよ、俺は何もやましいことはしとらん!」
面堂「ほほぉ、少々ためらったところをみると、少しは真実が混じっているようだな。」
 すかさず心理の隙をついてくるのは、面堂の得意技だ。
パーマ「そういえば、最近、あたるの様子がおかしかったのは、そのせいなのか?! ああんっ!!」
 パーマは胸ぐらを掴んで激しくガクガク揺さぶるし、面堂は真剣を突きつけて睨み利かせてるし・・。
 二人の威圧に圧倒され、俺はついにしらを切り通せなくなった。
あたる「わ・・わかった、話すよ。」
 話すと言ったら言ったで、二人が血走った目つきで、なおも詰め寄ってきた。
 正直に話したら、殺されるかも知れん・・。話さなくても結果は同じようなもんだろうけど・・。
あたる「落ち着いて聞いてもらいたい・・、今、我が家では・・・。」
 話しかけたところだが、教室の戸がカラカラと開いて、話の腰を折った。
 顔を出したのはラムだった。
ラム「ダーリン、掃除終わったっちゃ? もう待ちくたびれたっちゃよ〜・・。」
 ラムは俺たちの側まで来ると、この異様な雰囲気に気付いたのか、不思議そうに俺たちの顔を眺めた。
ラム「また何か悪い事したっちゃね、ダーリン。」
あたる「いや俺は・・。」
面堂「これからするんです。」
 俺の言葉を断ち切って、面堂が強調した口調で言い放った。
あたる「なにもせんわいっ!」
ラム「で、今度は何をやらかしたんだっちゃ?」
面堂「『やらかす』んです、ラムさん。」
あたる「何もやらかしてないし、やらかさないっちゅーねん! 聞いとるのかお前等!!」
パーマ「全然聞いてないみたいよ。」
 俺たちは掃除を終えて(中途半端だったのだがバックレた)学校を出た。
 商店街に向かう道すがら、春休みから唯という娘が我が家にやってきたことと、彼女の事情を、二人にかいつまんで話した。そして、
彼女がどんなに可愛いか、純真がゆえの小悪魔的魅力で、どんなに俺を翻弄しまくってくれるかってことを力説したのだ。
あたる「・・・ってなワケでよ、で、ナニする度にラムから電撃リンチだよ・・。まいるよなぁ〜・・。」
ラム「でも、それはダーリンが唯に対して悪さするからだっちゃよ。」
 すると、どうしたことか面堂の態度が急変した。
面堂「そうかー! 諸星・・いや諸星君! そういうことだったのか! ならば僕からもその方に挨拶せねばなるまい!」
 目を輝かせて、俺の手を取る面堂なんて、もう一生見ることは無いだろうと思ってたぜ。
あたる「何? なんでお前が唯ちゃんに挨拶しなきゃならないわけ?」
面堂「なんでって、僕は君の親友だからに決まっているではないか! 『友達がいつもお世話になってます』と一言いいたいのだ。」
パーマ「なら俺だって、友人の為に挨拶に行かなきゃなぁ。」
あたる「何が親友だ? にやけたツラしてそんな話されても、説得力がからっきし無いぜ。」
パーマ「う・・。」
面堂「ま・・まぁ、それはそれとしてだが・・。そもそもキミの話はどこまで信じていいのか、わからんからなぁ。キミが言う程、美女で
   もない様だし・・。一緒に生活しているのに諸星が手を出さないのがいい証拠だ。第一、共に生活していて、その娘が無事で済むは
   ずが無い。一日も持たずに逃げ出すだろう・・・いやいや、一時間・・三十分とあの家には居られまい。」
 後から後から、よぉも言ってくれるよな・・。

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