時は夢のように・・・。「第四話」 (Page 2)
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あたる「待ち合わせまで10分もあるぜ。パーマって待ち合わせの時間より早く来て待ってるタイプだったのか。意外だな・・。」
面堂「なに面白い事を期待してるんだ。それにしても諸星よ、なぜ、この僕がこそこそと覗きせにゃならんのだ?」
あたる「それを言うなよ。たまにはこういうのも面白かろ?」
 そのとき、改札口から、淡い水色のワンピースを着た女の子が現れて、パーマに駆け寄った。
ミキ「パーマくーん! 私、今日は早く着きすぎたと思ったのに。待った?」
パーマ「いやいや、俺も今きたところさ。」
 ・・・・ちっ、やってろ! 背中がむずがゆくなってくるぜ、まったく。
 早速、二人は商店街を歩き出した。映画でも行くのだろうか?
 書店の前を通り過ぎて、デパートの前にさしかかったとき、ミキちゃんがふと足を止めた。可愛らしい声をあげてショーウィンドーを覗
き込んだ。
 四月といえばブランド物の洋服で新作が多く出まわるってわけで、いろんな洋服がディスプレイされていた。豪華な洋服から、可愛らし
いもの、シンプルで大人っぽいのやら。
 高価そうな洋服をうっとり眺めるミキちゃんと、それを少し離れて待っているパーマ。
あたる「女の子は分からんな・・。何着ても脱げば同じだろうに・・。」
面堂「そういう事は人前では言わん方がいいな。ラムさんの前でも。」
 面堂の言葉で、突然ラムの顔が脳裏によぎった。なんでか途端に顔が熱くなって、妙な汗が出てきやがった。
 ちょうどその時だった。
 服に気を取られていたミキちゃんが、後ろを歩いていた二人組みの女性にぶつかり、よろけた。
ミキ「きゃっ、ごめんなさいっ!」
「ごめんね。こっちもよそ見してたから。」
 ぶつかった拍子に尻餅をついたミキちゃんのワンピースを、女性たちがぱっぱっと払ってあげる。
パーマ「大丈夫? ミキちゃん。」
ミキ「パーマくん。ええ、大丈夫。」
「ん・・・・?」
 パーマと女性たちは顔を見合わせ、きょとん、として、首を傾げた。
「あの、どこかでお会いしませんでしたっけ?」
 それを見てあわてたのは、何を隠そう、俺、諸星あたるだった。
あたる「おいっ・・・唯ちゃんと沙織ちゃんじゃ・・っ! 今日は買い物に行くって言ってたけど、新宿だったのか。」
 唯ちゃんとパーマたちが遭遇するなんて、偶然にも程がある。ちょっとまずい。今見つかると、なんかヘンな事になりそうだぞ。
 パーマは唯を見やって、ニマッと笑った。
パーマ「こんにちはっ!」
唯「・・・確か、前にあたるさんと一緒にいらした・・・?」
パーマ「パーマですっ! あたるクンの同級生です! ミキちゃん、こちらが今あたるクンのお家にいらっしゃる、祈瀬唯さんだよ。」
ミキ「ああっ! 以前パーマくんからお話し聞きしました、すっごい美人だって。はじめまして、ミキです!」
 ちょこんとミキちゃんは頭を下げた。パーマは俺たちには決して見せない(当然だ、そうじゃなきゃキモチワリィっ!)優しい目で彼女を
見やり、唯に向き直った。
パーマ「唯さん、この娘はミキっていいます。俺のガールフレンド。今日は買い物ですか? 奇遇ですね!」
沙織「ちょっとちょっと、なかなかイイ感じのカップルじゃなぁい! 私にも紹介しなさいよ。」
 沙織ちゃんが割り込んできた。
沙織「私、中山沙織。唯の親友で同じ職場なんだ。よろしくね。楽しそうな彼に、可愛い彼女ね。あたるくんの友達でしょ? なかなかあた
   るくんも隅に置けないわ!」
 パーマとミキちゃんの手を握って、にこにこしてる。フレンドリーはいいんだけど?
 沙織ちゃん、なんか怖いです。
 ますます出ていけないってゆーか、見つかるとまずい雰囲気。
あたる「ど・・どうする、面堂・・・あっ!? いねぇっ! あの野郎、逃げやがったなっ!」
 ハッと気付いた時には、面堂はすでに姿をくらましていた。
 おれも慌てて逃げ出した。
 よく考えれば、見てただけで何も悪いことはしてないのに・・・。
 後のことはなにをどうしたのか、あまり覚えていない。
 西部池袋線下りの準急に揺られながら、俺はなぜかビクビクしていた。小心者である。
 途中コンビニに立ち寄って、気分を落ち着けてから帰路についた。

自宅。
 家に帰った俺は、何気なしに玄関のドアを開けた。
 瞬間、来た。
 ドガシャーーーーンンッッ!!!
あたる「あぎゃぁぁーーーっっ!!」
 電撃が脳天から爪先まで一気に走り抜けた。
 顔を上げると、目の前にはラムが仁王立ちしていた。
ラム「ウチをほったらかしにして、今までどこ行ってたっちゃ? 絶対ガールハントだっちゃね!!」
 冷やかな目つきで俺をねめつけるラム。
あたる「ら・・ラム・・。イキナリなにすんだっ! 今日は面堂と一緒に・・うっ。」
 やばい。うっかり口にするとこだった。
ラム「終太郎と一緒だったのけ? ダーリンが珍しいっちゃ・・。終太郎とどこ行ったんだっちゃ?」

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