時は夢のように・・・。「第四話」 (Page 6)
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あたる「俺の誕生日をだしにしくさって、ほんとは宴会がしたかっただけだな。」
パーマ「そんなことねぇよ。単純に楽しいことが好きなだけ。せっかくだし、盛り上げたいだろが。あたるの誕生日がメインには違いない
    って。」
 俺はなんか腑に落ちなくて、パーマが手に持ってた小さなグラスを奪い取って、一口飲んだ。腹の底から熱いものがすごい勢いで込み上
がってきて、あやうく吹き出しそうになった。
あたる「ぐぇぇーーっ! ぱ、パーマ、こ、これ、なんだよ?!」
パーマ「ああ? ウォッカにガムシロップと炭酸水を混ぜて作った、パーマスペシャルだ。この『かーーっ』とくるのが最高なんだよな。」
 パーマは平然としていて、平気に飲んでやがる。
あたる「この酒豪どもが・・・。いったいどのくらい飲んだ?」
パーマ「俺はコレを3杯とビールを2杯。しのぶとミキちゃんはカクテルを・・あいつら二人で一本空けちまったぜ・・。サクラ先生と面
    堂は庭に出てウィスキーを飲んでた。面堂のやつ、なんか自棄酒っぽかったぜ。それからメガネ達は・・把握できないな。ラムち
    ゃんと唯さんと沙織さんは・・・何飲んでるのかな?」
あたる「けっこう飲んだなぁ。」
 そういえば、メガネ達が持ってきた数種の酒は、いつのまにやら、けっこう空いてしまっている。
 酒の勢いもあってか、みんなハイテンションになってる。
 普段、ラム以外に目がいかなかったメガネが、唯ちゃんや沙織ちゃんとゲームの話しで盛り上がってるし。
メガネ「へぇーーっ、沙織さんて、けっこうゲームとか好きなんですか? 二人ともバイク乗ったりとかスポーツしたりしてるなら、反射神
    経はいいんでしょ。それじゃー、対戦やってみましょうよ! おいあたる、ゲームソフトどこにあんだよ?」
あたる「さぁーな。ジャリテンのやつ、ゲームソフトを隠してやがんだよ。」
ラム「ウチ知ってるっちゃよ。テンちゃんが隠した場所が変わってなければ・・。」 
 ラムは部屋に飾ってあった絵を退かすと、額の後ろに隠してあったゲームソフトを取り出した。
あたる「あいつ、そんなトコに隠してやがったのか。」
 虎縞模様のゲームをテレビにつないで、沙織ちゃんとメガネが格闘ゲームを始めた。
沙織「ほらっ、唯もやってみなよ。」
唯「えっ? 難しそうね。私に出来るかな。」
 とかなんとか言いながら、意気揚々とコントローラを握って、テレビにかじりついた。
唯「きゃっ、えっ、あっだめー、技が出せないぃ! やぁー、やられちゃうよお!」
ラム「唯、ガードするっちゃよ、ガードっ。」
 テレビゲームに夢中になってる唯は、ちょっと子供っぽかった。でも、可愛かったな。

                               *
 夜も更けていった。俺は部屋の中がやけに静かなのに気付いて、目が覚めた。いつの間にか寝てしまっていたのだ。
あたる「あれっ? みんなどこに行ったんだろ・・。」
 部屋には誰もいなくて、さっきまでの賑わいがウソみたいに静まり返っていた。
 すでに後片付けも完了してるみたいで、掃除したみたいにキレイになってた。
 ふと時計に目をやると、午後9時をちょっとまわったところ。
 テーブルの上には一枚のメモが置かれていた。
あたる「えっと、なになに・・。」
 『これからみんなでカラオケに行きます。
  駅前のカラオケボックスですので、目が覚めたら来てくださいね。
  あんまり気持ちよさそうに眠ってたので、起こさずに出かけてしまいました。ごめんね。
                                           唯』
あたる「カラオケぇ?! ったく、行くんだったら起こしてくれりゃいいのに。」
 頭をかきむしって、立ち上がろうとした。その時、置いてあったメモが一枚じゃないことに気付いた。
あたる「あれ、二枚目がある・・。」
 『そうそう、私、あたるさんにプレゼントを渡すのを忘れてました。
  今日のうちに渡したいです。9時半くらいまで公園で待ってます。』
あたる「な・・なにぃ?! 唯ちゃんが俺にプレゼントをっ!!」
 時計は9時15分くらい。俺は速攻で家を出た。

友引公園。
 夜の公園は、しんと静まり返っていた。辺りは月明かりで照らされて、神秘的な雰囲気に満たされていた。
 満開だった桜は、この前降った雨でだいぶ散ってしまっていた。でも葉桜ってのもなかなかいいかも。
 俺は夜の公園を、あてもなく、唯を探し歩いた。
 公園の入り口を通って、だいぶ歩いた気がする。このまま公園を通り抜けると市街地に出てしまう。
あたる「どこにいるのかな・・。」
 周囲を注意深く眺めながら、歩いた。
 すると、街灯で照らされたベンチに座る、髪の長い女性の姿を見つけた。唯だ。
あたる「お待たせぇ。こんな所にいたんだ。」
 俺は唯の元に駆け寄る。
 女性が立ち上がると、街灯に照らされて浮かび上がった影は、長く伸びていった。

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