時は夢のように・・・。「第四話」 (Page 3)
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あたる「あ・・いや、別に・・どこって・・。別にどこでもよかろうが! あー腹減ったぁ!」
 パーマを尾行して新宿まで行ったなんて言えるはずもない・・、適当に誤魔化すのが一番だなっ!
 玄関をあがろうとした時だ。
唯「ただいまっ!」
 玄関のドアが開いて、唯の明るい声がした。
ラム「おかえりなさいだっちゃ。」
あたる「お・・おかえり・・。」
 唯の顔を見たとたん、ちょっとだけ風化していた罪悪感が再び脳裏をよぎった。
唯「あっ、あたるさん。ちょうどいい所に居てくれたわ。はい、コレ持って、力持ちさん。」
 と言って渡されたのは、スーパーのビニール袋。中にはジャガイモ、にんじん、ほうれん草、ピーマンが入っていた。
唯「おばさまから買い物を頼まれてたの。スーパーから歩いてきたんだけど、もう大変。バイクで行けばよかったなぁ〜。ほら見てぇ、こ
  んなにビニールのあとがついちゃって。」
 掌をひらひらさせて、唯ははにかんだ。
ラム「ご苦労様だっちゃ。言ってくれればウチも手伝ったのにぃ。」
唯「出かけついでだったから、今度は手伝ってもらおっかな。」
 俺と唯は、帰宅直後なので洗面所で手を洗ってから、茶の間に入った。
 唯が来る前と後ではだいぶ習慣が変わってきている。コレがその証拠だな。前までは、外から帰っても手なんか洗わなかったもんな。

茶の間。
 茶の間では父さんと母さんとラムが定位置に座っていた。
母「あらっ、唯ちゃん。今日はありがとう、買い物してきてもらっちゃって。」
唯「いえいえ、いいんです。私、一日遊んでたんですから、買い物くらいさせてください。」
 母さんは俺をジロリと見やると、
母「ラムちゃんも今日は掃除頑張ってもらっちゃって、ご苦労様。誰かさんが何にもしないから、二人に負担がかかっちゃうわねぇ。」
 くっ・・。耳が痛い。なんだか俺の居場所がなくなってきたぜ・・。
 でも、反論できないのが悔しい・・。
唯「そうだ、今日ね、すごい偶然で! 新宿であたるさんのクラスメイトの・・・この前うちに来たわ、えっと、わりと長身で面長の男の子
  に出会ったの。パーマくんっていうの? びっくりでしょ!」
あたる「へぇーーっ! そいつぁ驚いたな!」
ラム「えっ? パーマさんと会ったのけ?」
唯「うんっ。彼女と一緒だったみたい。ミキさんって、とっても可愛い娘だったなぁ。」
あたる「ああ・・・ミキちゃんか。俺も何度か会ったことあるよ。あの二人、メガネも黙認しているから堂々と付き合ってられるんだ。幸
    せそうだったんでしょ?」
 どうやら、その場に俺が居たことは、ばれてないようだ。
唯「ええとても、イイ感じの二人だった・・・うまくいってる恋人同士って、いいわね。うらやましくなっちゃう。」
 そう言ったときの彼女の表情は、なんだか寂しそうだった。
 それからふいに、何か思いついたように、明るく話し出す。
唯「・・・そうだ、パーマくんに聞いたんだけど、あたるさん、4月13日が誕生日なんですって?」
ラム「だっちゃ♪ もうすぐダーリンの誕生日だっちゃよ。」
 うきうきしたような口調で、ラム。
母「あら、そういえば、もうそんな時期ね・・。」
父「そうか、また一つあたるも大人になるか。」
 両親は相変わらずそっけないが、いつものことだからな・・、もういいや。
唯「私、あたるさんの誕生日も知らないで、ごめんね。ねぇ、お祝いしない?」
あたる・ラム「お祝いっ!?」
唯「そう。パーティーやろうよ! パーマくんとミキさんも、来てくれるって。それから、この前遊びに来てくれたお友達にも声をかけてお
  くからって。」
あたる「パーマのヤツ、なにか言ったんだな。」
唯「あたるさんはこの頃、誕生日のお祝いもやらなくなってるみたいだって、パーマくんが言ってたわ。ねっ、やろうよ、親しい人だけ招
  待して。沙織ちゃんも来たいって。絶対楽しいわよ♪」
ラム「イイっちゃねぇ♪ ダーリンの誕生パーティーなんて初めてだっちゃよ♪」
 のってきたラムは、満面の笑みで唯ときゃーきゃーはじまった。
母「良かったじゃない。あんたパーティーなんてしてもらったことないでしょ。」
父「じゃあさ母さん、その日は二人で食事でも行こうか?」
母「あらっ、いいじゃない。あなたが私にご馳走してくれるなんて嬉しいわぁ。」
父「いやいや、誰もそんな事言ってないよ母さん。はっはっはっはっ!」
 母さん達もちゃっかり便乗してきたし・・・。
あたる「あのぉ・・・もしかして、もう手筈は整ってるの? パーティーを『やろう』じゃなくて『やります』ってことでしょ。」
 唯はニッコリ微笑むと、コクリと頷いた。そして目をキラキラさせて、俺を見た。
 俺がどう思うが、既にイヤだなんて言える状況ではない。
 ラムと二人で過ごす誕生日っていうのも、なんとなくアレだよな・・。パーティーだったらラムと二人っきりなんてシチュエーションは
無いだろうから、好都合だな。

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