時は夢のように・・・。「第五話」 (Page 2)
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ラム「お母様、もちろんウチもお手伝いするっちゃよ。」
母「はいはい。帰ったらいっっっぱい手伝ってもらいます! でも、旅行はしっかり楽しんできなさい。」
唯・ラム「はぁ〜〜〜〜い♪」
 満面の笑顔で、二人が見事にハモった。
 唯は洋服の上からつなぎを着込み、バイクにまたがった。
唯「さあ、ラムさん乗って。これ、ラムさんのヘルメット。」
 そう言うと、ラムにヘルメットを差し出す。前に俺が借りたやつだ。
ラム「ウチは平気だっちゃよ。必要ないっちゃ。」
あたる「かぶっといたほうがいいよ、ラム。」
ラム「必要無いのにぃ・・。」
 いぶかしげな表情で、しぶしぶヘルメットをかぶると、やっぱり俺と同じリアクションで、
ラム「なんで唯の声だけ、こんなに聞こえがいいっちゃ?」
 唯はニッコリ笑って、あの時と同じようにラムに説明した。
唯「ちゃんとシートベルトしてね。」
 バイクのスイッチをONにして、形をレーシングタイプに変化させると、エンジンをかけた。
 辺りに近所迷惑な爆音が響く。
 ゆっくりとバイクが動き出して、家の門の方に行った。
あたる「うひひひひ・・、はたしてラムは、無事に沙織ちゃんの家にたどり着けるかなぁ。」
 玄関の方で、エンジン音がひときわ大きく鳴り響いた。と同時に、
「っちゃーーーーっっ!!」
 ラムの叫び声が近所に木霊して遠ざかって行った。
                                *

 不思議なものだ。いつもはラムと唯とできゃーきゃー騒いでて、うるさくてやんなっちゃうくらいだったのに。居なければ居ないで、家
の中が妙にがらんとして、寂しい。
 旅行ったってほんの4・5日のことなのに・・・俺は、ひとりの時間をもてあましてしまった。
 ガールハントに行こうか・・。でも、なんでだろう、気分が乗らない。
 こないだラムに告白されてから、ガールハントという行為がなんとなくうしろめたくって・・。そりゃあ、ガールハントは俺の生き甲斐
だ、やめる気なんてさらさら無い。でも、なんかラムの目が届かない所でそんなことするのは、フェアじゃないなんて考えてしまう。
 くそっ、なんでこんなに変わっちまったんだ、俺っ。絶好のチャンスだ。ラムのいない今ならなんだって出来るじゃないか!
 ・・・でもっ!
 不意に、あの夜のラムの顔と言葉が頭に浮かぶ。そして、ガールハントの意欲が消え、罪悪感だけが残る。
 俺の心の中で、葛藤が起こり、堂々巡りを繰り返すのだ。
 苛立って、頭をかきむしった。
 で、結局。俺は何人かの悪友に電話をかけてみる。
 案の定、誰もいやしない。パーマも面堂も同じだった。
あたる「もしもし、パーマくんのお宅ですか。諸星あたるです。あの、パーマくんは・・・出かけてる? ミキちゃんと? そうですか、い
    や、いいです。借りてたCDを返そうかと思ってたんですけど、また学校で会うし・・。」
 電話を切った途端、やけに悲しくなって、溜め息が出る。
あたる「そうかぁ、デートか。あ〜・・。面堂もハワイの別荘に出かけてるっていうし、あいつらが休みに暇してるわけないかぁ。」
 世間では行楽で賑わっているゴールデンウィーク、俺はあまり出かけもしなかった。
 たまに商店街をぶらついて家に帰ると、寂しくてたまらなくなる。
 なんでこんなに虚しいんだろう。ラムと唯がいないってだけで。
 今頃何してるのかな? あの三人・・・。
 変なヤツにからまれてやしないか? でも、ラムが一緒だからそんな事心配してもしょうがないか、電撃があるもんな・・、でもツノが抜
けてたら? ・・・まさか、今日あたりラムのツノの生え変わり時期じゃ?
 カレンダーの日付を確認する。だいたい一年周期だから、まだ先のようだ。
 俺はちょっと考え、・・・やめた! ろくな考えにならん。
 寂しさを紛らわせようと、机の奥からエロ本を出してパラパラめくった。
 ちょうど間がいいんだか悪いんだか、そのページにはどこにでもいるようなミニの制服にルーズソックスの女子高生二人が載ってた。な
かなか美形の女の子ふたり組みだ。
 駅の階段で、ニッコリ笑って振り返ってる。
 次のページで、場面はホテルらしき部屋に変わった。ページをめくるごとに露出度が高くなってくる。
 ・・・うわぁ・・・。
 あらぁ〜っ、ひでぇ!? あんなことしてるし・・。
 俺はエロ本に夢中になってた。そのうち、奇妙なことに・・・顔は全然違うのに、本の女の子たちと、唯とラムがだぶって見えてきた。
 唯とラムが京都で悪い奴らに目をつけられて、追い詰められて、ホテルに連れ込まれたり、いかにもヤクザ風な男たちに、あんなことや
こんなことや・・・される前に男たちが黒焦げになるか。

                                *
 俺はエロ本を机にしまって、茶の間に下りてきた。

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