時は夢のように・・・。「第五話」 (Page 5)
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可愛らしいのもいいけど、俺としては絶対セクシーなヤツだな。
ふと気付いたら、化粧机の鏡に鼻の下が伸びきった俺の顔が映っていた。ハイレグ水着を着た唯の姿を想像して、顔がデレデレになって
しまっていたのだ。
意外と胸があるのは知ってる。ウエストは細いし、脚も長いし、ボディラインも綺麗だ。(つなぎを着た唯を見た限りじゃ・・・。)
夏になったら、唯を海に誘おう・・・。
あっそうだっ!! ブラを見ればサイズが分かるじゃないか!
あたる「なんとっ?! Bカップで80かっ! やっぱりなぁ。」
しかし、この水着、誰かに見せるつもりで買ったのか?
唯は綺麗で魅力的だ。ちょっとだけ不思議なオーラを持ってて押しが強いけど、そこもまたイイ感じで可愛いんだ。付き合ってる彼氏の
一人や二人いたって不思議はない。
・・・確かに、いつもお姉さんぶってて、たまに年上とは思えないくらい可愛かったりで、そんなギャップは困りものだけど。そういえ
ば、俺は、彼女の家族みんなに気に入ってもらえる自信なんてないな・・・。
妄想はとめどなく、だんだんと妙な方向にむかっていった。
*
5月5日、子供の日。
風をはらんで勢いよくひるがえる鯉のぼりが、あちこちで見られる。
今日は五月晴れ。青い空に鯉のぼりが色鮮やかに映えて見えた。
俺のちゃっちい悩みを吹き飛ばしてくれっ!
旅行に出た二人のことばかり気にして、しなくていい心配ばかりして悩んでる自分が情けない。
「おいあたる、遠い目してどこ見てんだよ。」
「あっ、あそこに鯉のぼりが見えるよ! 可愛いーっ♪」
庭に立って近所の鯉のぼりを眺めていたら、俺の背後から二人分の声がした。
あたる「パーマ?! ミキちゃん!」
パーマと彼女のミキちゃんが雛人形みたいに並んで立っていた。しかし、こうしてみてもパーマには勿体無いくらいの彼女だよ。
パーマ「あたる、こないだ電話くれたんだってな? らしくなく元気が無かったって、おふくろが心配してさ、これ持ってけってうるさくて
よ。そのついでに、くたばっちゃいないか確かめに来たんだ。」
と、パーマは手に持っていた風呂敷包みを掲げた。
箱みたいな物が入っていた。箱みたいな物は、四角くて厚みがある。
パーマ「その顔じゃあ、あいにくと死んでないみてーだな。」
皮肉っぽいこと言ってくれるじゃん。ニヤついた顔がまた腹立たしい。
あたる「なんとかな・・・腐りかけてたけど。差し入れ持って来てくれたのか?」
パーマ「柏餅だ、おふくろが毎年作るんだ。遠慮はいらねぇから食ってくれよ。」
ミキ「パーマくんのお母さん、とても上手に作られるんです。ほんっとに美味しくて。一緒にいただきません?」
ミキちゃんが、まぶしいくらいの表情で、にっこり笑う。こいつらは、メガネも公認(?)の付き合いだ。なーんか、平和でいいよなぁ。
あたる「ちっ、あてられるぜ。あがれよ、茶でも飲もうぜ。」
ミキ「はぁい。あっ、私、お茶の準備手伝いますぅ。」
俺たちは庭から玄関にまわった。
何気に郵便受けが目に入ったので、中を覗いた。
あたる「あれっ、郵便が届いてるぞ。」
俺は郵便受けから手紙と封書を取り出して、一つ一つ宛名を確認しながら、玄関を上がった。
あたる「これは父さん宛で、これは母さんの・・・それからこの手紙は・・諸星あたる様? 俺宛て? 誰からだろ?」
その手紙は絵葉書になってて、満開の桜と、神社のような建物が写っていた。
ミキ「うわぁ、綺麗な景色。京都のお寺みたいですね。」
京都の・・ってコトは、思い当たる人物は一人しかいない。
あたる「えーと、なになに・・。」
『元気にしてますか? 唯です。京都はとても素敵です。いろんな所に行きました。
お土産を楽しみにしててくださいね。』
やっぱり唯ちゃんだった。
葉書の裏には「ピース」ってやってるラムと唯ちゃんと沙織ちゃんのイラストが書いたあった。へぇー、これ沙織ちゃんが書いたのか。
結構上手いじゃん、みんなよく似てる。
パーマ「なんだよあたる、急に顔色良くなったじゃん。」
ミキ「なるほど、そーゆーことですかぁ。」
あたる「うるせーなぁ、ほっとけ。」
パーマ「いかんなぁ、あたる。もっと素直になったらどうだ? あの娘たちと付き合ってくのは辛くなるぜ。腹割ってぶつかれない相手とは
、いつか決別するしかなくなるってもんだ。」
パーマは口いっぱいに柏餅を頬張った。
結局、柏餅を一番食べたのは、こいつだった。
持って来たランチボックスいっぱいに詰めてあった柏餅を食べるだけ食べて、パーマとミキちゃんは帰っていった。パーマのヤツ、何し
に来たんだか・・。
窓の外を見ると、遠くの方で鯉のぼりが気持ちよさそうに空を泳いでる。
なんだか清清しい気分になった。久しぶりの感覚だ。
この時期は、少しずつだけど日が長くなってきていて、夕方なのにまだ明るい。
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