時は夢のように・・・。「第五話」 (Page 8)
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まずは京都で最もポピュラーなお菓子。柔らかい三角の生地に餡を包んだ『生八つ橋』と、頑丈な歯が試される『八つ橋煎餅』や、干菓
子の詰め合わせ。
沙織「唯、あんたのお土産ってお菓子ばっかりじゃなーい。」
唯「そんなことないもん! これは匂い袋でしょう・・うさぎのとか金魚のとか、きんちゃくにもなるんだよ。それから、『よーじや』の油
取り紙と手鏡のセットもあるんだからね。・・でも、ラムさん、惜しかったね。『笹屋伊織のどら焼き』買えなくてさ。毎月20日か
ら23日までしか売ってないなんて・・。楽しみにしてたのにね。」
ラム「うん、残念だったっちゃねぇ。でも、また修学旅行で行くから、その時に買えるチャンスがあるっちゃよ。」
沙織「でもさ、夏にも行こうねっ。お菓子と料理が美味しくって困っちゃったねーっ♪」
唯・ラム「ねーーっ♪」
二人がまるで双子の姉妹みたいにハモった。
それから娘三人できゃーきゃー始まった。沙織ちゃんも加わったから、賑やかだこと。
沙織「今度はあたるクンも行こうよ。今回の京都行きは、私がちょっと強引に決めちゃったの。いつか京都行こうって約束してたから。だ
って、秋の選考で海外専属のウエディングプランナーに決まったら、唯はフロリダに行っちゃうかもしれないもん。」
唯「っ・・沙織ちゃん!」
言いかけた沙織ちゃんを、唯が止めた。
ラム「それって・・どういう事だっちゃ・・?」
ラムが、訳が分らないといった複雑な表情で、言った。
俺も声にこそ出さなかったけど、ラムと同じ気持ちだ。
なんだって?! それはどういうことなんだ?!
秋の選考って・・・?
唯が、フロリダに行く?
沙織ちゃんの言葉が頭の中でクリアーになればなるほど、目の前の物が見えなくなった。理解出来たら、愕然としてしまっていたのだ。
俺とラムは、すっかり、このままいつまでも、唯がここにいるものだと思っていたんだ。
唯「もうっ、まだ選考まで上れるとも決まってないのに。しようがないなぁ。」
沙織「あら、海外でプランナーの仕事するのが夢なんでしょ。せっかくお父様がフロリダに赴任してるんだもの、向こうに行けるチャンス
じゃない。」
唯「そうだけど、私、まだまだ未熟だし、無理よ・・。それに、日本も好きなんだもの。」
唯は頬をほんのり染めて、うつむいた。
唯「そりゃあ、外国で仕事もしてみたいわ。だけど私自信、迷ってるの。どうしたらいいのか・・・どちらに決めても、後悔しそうなんだ
もの。」
唯の真っ直ぐな瞳がまぶしくて、まともに見れない。
だって・・・唯たちがいない夜、俺は、とても口には出せないくらい、ろくでもない妄想に悶々としてたんだ。
エンディングテーマ:ロマンスが痛い
第五話『諸星あたると秘密の部屋』・・・完
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