時は夢のように・・・。「第五話」 (Page 6)
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 その日の7時頃に、ラムと唯は帰ってきた。
 玄関のドアが開くと同時に、元気な声が木霊した。
ラム「ただいまだっちゃーーっ!!」
唯「ただいまーーっ!!」
沙織「こんばんは〜、おっじゃまっしまぁーっす!」
 沙織ちゃんも一緒だった。
 この前、沙織ちゃんと初めて会ったときは、面堂とメガネ達が前触れ無く家に来ていたせいもあって、ご機嫌ななめみたいだったけど、
今日のところは上機嫌のようだ。
あたる「おかえりぃ〜〜っ、寂しかったよぉ、唯ちゅわぁ〜〜ん♪」
 目標、唯ちゃん。接近しまぁ〜〜っす!
 俺は両腕を広げて、唯をハグしようとした。しかし、背後から襟首をがしっと掴まれたもんだから、勢いづいていた俺は尻餅をついてし
まった。
ラム「ダーリンっ! 帰ってきて早々、みっともない事するんじゃないっちゃ!」
唯「ただいま、あたるさん。」
 にっこり微笑んで唯が言った。
 見ると、出かけたときより、荷物が増えている。三人とも、お土産を入れた大きな紙袋と、ふくらんだ旅行カバンを両手に下げていた。
唯「あのぉ・・。」
 ちょっと甘えた、すがるような上目遣いで、唯。
あたる「分かってるよ。荷物持てばいいんでしょ。」
沙織「さっすがあたるクン。気が利くじゃなぁい!」
 三人は沢山の荷物を俺に押し付けると、「軽くなったぁーっ」と言わんばかりに思いっきり背伸びした。
唯「とりあえず、おじ様とおば様にただいまって言わなきゃ。」
 唯たちはスタスタと茶の間の方に行っちまった。
 俺も両手いっぱいの荷物を引きずって、茶の間に移動した。

茶の間。
 戸を開けると、父さんと母さんが定位置に座っていた。
 二人はラムたちの顔を見るなり、顔をほころばせた。
母「まぁまぁ、唯ちゃん、ラムちゃんもおかえりなさい。」
父「おかえり。ゆっくりできたかい?」
ラム「お父様、お母様、ただいまだっちゃーっ。」
唯「ただいま帰りました。長いこと留守にしちゃって、すみません。」
 ぺこっと頭をさげて、ちょっぴりはにかんだ。
沙織「お邪魔してます。唯がいつもお世話になってます。」
 唯の後ろで沙織が深々とお辞儀すると、唯の顔を見やり、
沙織「きっとこの娘の事ですから、ご迷惑をおかけしてるでしょう?」
唯「ちょ、ちょっとちょっと、沙織ちゃんっ、私のお母さんみたいなこと言わないでよねっ。」
 めちゃめちゃあせった面持ちで、目を三角にした唯。ほっぺを膨らませた顔も、また可愛い。
 沙織は口を尖らせて、そっぽを向くと、一言ぽそっと、
沙織「べつにいいじゃない・・、私が居ないと、唯はお子ちゃま同然なんだから・・。」
唯「・・・沙織ちゃんっ!」
ラム「まぁまぁ、二人とも。大人なんだから喧嘩はやめるっちゃ。」
沙織「はぁい、はい。っとぉ、いけないよね、返事はハッキリきちんと一回。唯に怒られちゃう。」
 そんな唯たちの様子を見ていた両親が「あはははは・・。」と苦笑いした。
父「まぁ、今日は疲れたろうから、ゆっくり休みなさい。土産話は明日にでも聞くから。」
母「でも、ラムちゃんたちが帰ってきてくれて、これで心から安心できるわぁ。二人がいない間、大変だったのよ。この子が何もしてくれ
  ないから。二人には明日から頑張ってもらわなきゃ。」
 俺の顔を見やり、言ってくれやがった。ったく、口開くたびにコレだよ。
唯・ラム「はぁ〜〜い♪」
唯「あっ、そうだ。これ、おじ様とおば様へのお土産です。京都のお菓子です、食べてくださいね。」
 紙袋を掲げて、母さんに渡した。
母「あらっ、『八つ橋』じゃない。気を使わせちゃって、ごめんなさいね。」
唯「いいんですっ。いつもお世話になってるんで、逆にコレだけじゃ申し訳ないんですけどっ・・。」
 両手をひろげて、パタパタ振った。
唯「じゃあ、片付けとかしなきゃいけないから、部屋に戻りますね。」
 小さく会釈すると、唯とラムと沙織ちゃんは、二階へ上がって行った。
 別に気になってはいなかったんだけど、なんか後を追いづらくて、ちょっとだけ時間を空けて二階に上がった。

あたるの部屋。
 俺が自分の部屋に入って、机の椅子に座った時、ドアがノックされた。
あたる「はぁい。どぉぞ〜。」
 すうっとドアが開くと、唯が顔を出した。
唯「ちょっとだけ、入っていいかな?」
 少々、申し訳なさげな表情で、唯。
あたる「ん、いいとも。」
 返事を聞くなり、パアッと笑顔になり、
唯「えへへ・・、おじゃましまぁ〜す。」
 ドアの影に隠れて見えなかったけど、ラムと沙織ちゃんも一緒だ。
 沙織ちゃんは、絨毯代わりになってる虎の毛皮の上にひっくりかえって、大きくのびをした。
沙織「ふう、ちょっと疲れちゃったな。まだ家に帰ってないんだ。こっちに先に来ちゃって。ラムちゃんたちがせかすから。」
ラム「だぁってぇ、ダーリンが心配して、夜も眠れてないんじゃないかと思ったっちゃ。早く安心させてあげたかったし・・。」

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