時は夢のように・・・。「第五話」 (Page 7)
Page: 01 02 03 04 05 06 07 08

 まるでこの数日間の俺の様子を見ていたような語り口だったので、俺の肩が一瞬びくっとした。
あたる「なっ、なぁんで俺がラムの心配せにゃならんの?!」
沙織「いいからいいから、照れ隠しなんて無用よ。」
あたる「誰も照れてなんかないわいっ!」
 なんともキワドイ所を突いてくる沙織の言葉に、つい熱くなってしまった。
沙織「ラムちゃんの理由は分かるとして、問題は唯よ。なんで『急いで帰ろう』って? なにか用事でもあったの?」
唯「えっ? 私は別に・・・急いで帰りたい理由なんて・・・あったわけじゃないとは言えないけど・・・ゴニョゴニョ・・。」
 はじめは焦った面持ちで話してた唯が、急に顔を真っ赤にして俯いてしまった。声はゴニョゴニョで聞き取れない。
沙織「はっは〜ん。分かったぁ。あんたあたるクンに惚れたなぁっ。」
 沙織の言葉に、俺たちは一瞬で目つきが変わった。
唯「なっ、ななな、なに言ってるのよっ! 沙織ちゃんっっ!」
ラム「にゃにぃ〜〜っっ! 唯っ、それホントだっちゃ?!」
 ラムは目を吊り上げて、唯にくってかかった。
 沙織は軽く言ったつもりだったみたいだけど、ソレは超重要(超危険?)な質問だ。
 唯は慌てふためいてテンパってるし、ラムは今にも電撃リンチって感じで唯に詰め寄ってるし・・。
 そんな時俺は、何故か身体が硬直してしまっていた。
沙織「冗談よ、冗談。ちょっと危ない関係ね、あんたたち・・。」
唯「さっ、沙織ちゃんっ!!」
 目を涙目にしてふくれっ面になる唯。「かんべんしてよぉ〜っ。」って小さくつぶやく。
ラム「いくら唯でも、ダーリンはわたせないっちゃっ!」
唯「ラムちゃんも誤解しないでぇ。そんなワケ無いでしょぉ。」
 なんかとっても残念な感じだ。いや、別に期待してたワケじゃないけど・・。
 ちょっとだけ気まずくなった空気に絶えられなくなったのか、唯が「お茶の支度してくる。」と言って、部屋を出て行った。
 そんな妙な流れを一新したのが、原因を作った本人、沙織ちゃんだった。
沙織「あたるくぅん、コレ、私から。」
 沙織ちゃんは『KYOTO』って書かれたおっきなタオルと、妙にリアルに出来た刀のキーホルダーをくれた。金色のメッキで出来てる
日本刀のミニチュアだ。ご丁寧に鞘まで付いてる。
あたる「ありがと。」
ラム「あっ、ウチからもお土産。はい。」
 ラムがくれたのは、青色のお守りだった。なになに・・、『愛が育ちます。ふたりの愛。』だって。なんちゅー恥ずかしいフレーズだ。
 読んだだけでも歯が浮いてしまう、このお守りは・・『えんむすびお守り』だって?
ラム「見て見てダーリン、このお守りペアになってるっちゃ。片方はウチが持って、そっちはダーリンが持つっちゃ。これでウチとダーリ
   ンは・・。」
あたる「立派な夫婦か?」
ラム「だっちゃ♪」
あたる「けっ、馬鹿馬鹿しいっ。」
 こんなモンでホントに結ばれるんなら、苦労はいらないよなぁ。まぁ、貰って悪い気はしないな。
ラム「あとはねぇ・・。」
 旅行カバンの中をごそごそ探ると、今度は、真ん丸と膨らんだ紙の包みを取り出し、俺の前に差し出した。
 なんか軽いぞ・・。包みを開けてみると、それは可愛らしい金魚鉢だった。紙で出来た金魚が紐で吊られて、ゆらゆらと鉢の中で泳いで
る。
あたる「なかなか可愛いもんだ。ありがとな。」
ラム「うんっ♪」
 満面の笑みで大きくうなずくラム。やっぱり可愛いよな・・・うん。でも、なんでか直視できないんだよな。
 部屋のドアがすっと開くと、唯がお茶の準備をして現れた。
唯「お茶の準備が出来たよ。おいしそうなモノ見つけちゃった。お茶うけにどうかな?」
 唯が声をかけた。
沙織「あらぁ、おいしそうな柏餅っ。どうしたの?」
あたる「ああ、知り合いのおばさんからもらったんだ。おすそ分けだよ。」
沙織「ふうん、これがクッキーとかケーキなら、女の子のプレゼントかななんて、ちょっと疑っちゃうけど、柏餅なら間違いないかな?」
 沙織ちゃんはいたずらっぽく笑って、柏餅を頬張った。
沙織「うんっ、これ、柔らかくっておいしーーい! 唯も食べなよ・・って、これじゃ逆よねぇ。」
 自分の言ったことにウケたらしくて、沙織ちゃんはけらけらと笑い転げた。
唯「はい、これあたるさんへ、お土産。」
 唯は小さな可愛らしく包装されたものを、カバンから取り出した。
あたる「開けてみていい?」
唯「ええ、どうぞ!」
 唯が俺のために選んでくれたお土産・・・なんか感動しちゃうなぁ。
あたる「そういえばさ、電話で言ってた絵葉書、今日届いたよ。桜が満開の写真。沙織ちゃんのイラストもすっごく似てた。」
沙織「まぁね〜♪ これでも小さい頃は漫画家志望だったの。」
 彼女はにこにこしながら、俺に目配せする。
 唯のお土産の包みを、どきどきしながら開けてみた。
 なんだか細かいのがいっぱいある。

Page 6 Page 8
戻る
Page: 01 02 03 04 05 06 07 08