時は夢のように・・・。「第五話」 (Page 4)
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 フォトスタンドにあった写真には、唯と唯の家族が写っていた。
 きりっとしてて頼もしそうなお父さんと、若くて美人なお母さん。小学生だと言ってた妹、そしておすましした唯。彼女はきっと毎日、
この写真を見てるんだろうな・・・。
 一番上の引き出しを開けた。
 引き出しの手前側にはペンケース、消しゴムとかクリップなんかのこまごました文房具がきちんと整頓してあった。奥にしまってあった
厚手の本を見て、胸が高鳴った。
 本の表紙に『DIARY』って記してある。日記帳だ! 鍵がかかるタイプ。ってことは鍵もどっかにありそうだな。何が書いてあるのか
、すっごく気になる。気になるが、覗き見してどうするっての。
 俺は誘惑を振り払い、水色のハートの模様がついたアドレス帳を探した。
 あったぞ。日記の隣だ。
 ページを数枚めくると、フロリダの家族の住所が目に止まった。
 住所を確認した俺は、急に余裕が出てきた。
 あらためて部屋の中を眺める。
 ちょっと躊躇いはあったけど、そんなこと足止めにはならない。俺は部屋の中を散策した。
 こんなおいしい状況を見逃して、出て行けない。
 俺の悪い癖だ、それは分かってる。まったく誘惑に弱いよなぁ。
 ・・・やっぱり良くない。やめよう。
 散々見てまわってから、決心した。机の上にあったキャンディーを、一個もらって、口の中に放り込んだ。
 部屋を出て行こうとした時、ふと机の影に、なにかゴミのようなモノが落ちていたので、何気に手に取った。
 こんなところにゴミを散らかしとくなんて、きれい好きな唯ちゃんらしくない。出かける時ばたばたしてたから、そのせいかな。
 そのゴミみたいなものは、柔らかい布で出来てて、白と水色のストライプ模様。ヒラヒラしたレースみたいなのがついてる。
 ソレは・・・とてもゴミなんて云えるモノじゃなかった。
あたる「どわぁーーっ!! こ、こここ・・コレはっっ?!!」
 広げてみて、ソレが何であるか確認できたら、おもわず叫んでしまった。幸い家には父さんも母さんもいなかった。水色のストライプの
ソレは、ショーツだったのだ。
 すっげーっ!! 小さいっ!! そういうものだと思ってはいたけど、実際、目の当たりにすると、想像していたよりずっと小さい。オドロキ
だ。こんなちっちゃなのにお尻とかが入るのか?
 まじまじと眺めて、観察してしまった。
 でも、じわじわと嫌な予感が頭の中で染み出てきた。
あたる「これは・・、やばいんじゃないかぁっ!」
 ショーツをじっくりとなめるように眺めた後で、俺は我に返った。
 コレはどうしたらいいんだ?
 机のところに落ちてましたなんて渡すのも変だし、箪笥に返しておいても不自然で気付かれてしまうかも・・。そりゃあないぜ、これば
っかりは濡れ衣だ。・・・鑑賞してたけど・・。
 何食わぬ顔して、このままもらっちゃおうか・・。
 でも、下着がなくなった事を唯が気がつかないわけないし。
 いかんっ! きっとラムも側にいるはずだ。あまり遅いと勘繰られてしまう。
唯『アドレス帳、まだ見つからないのかな? 遅いわね。』
ラム『きっとダーリンの事だから、唯の部屋であんなことやこんなことしてるっちゃ!』
 ってな事言ってるぞきっと。今は悩んでる場合じゃないぞ!
 とっさに俺はショーツを握りしめたまま、部屋を出た。
 唯の宿泊先のホテルに電話をかけて、唯に住所を伝えてやった後、俺は再び二階の唯の部屋に向かった。
 さてと、コレをどうしよう。
 バレないようにするには?
 やっぱり貰っちゃう?
 いろいろ悩んだ末、やっぱり、こっそり箪笥にしまう事にした。
 箪笥のどこに下着がしまってあるんだろ?
 一番上の引き出しには、ハンカチと靴下が入っていた。
 上から二段目には、白いカッターシャツやら、ブラウス、Tシャツ。
 三段目にはスカート、トレーナー、ジャケット。
 四段目はスーツとか着物とか・・、仕事用の服なのかな?
 順番に見てきて、一番下の引き出しをあけた。
 その瞬間、一瞬で脳みそが沸騰したみたいに歓喜が込み上げてきて、涙がちょちょぎれそうになった。
 やりぃーーっ!! 下着発見っ!! レースで出来たものやら、ふわふわの透けた生地・・・これがスリップってやつか。手当たり次第に引っ
張り出して埋もれてみたい衝動にかられる。けど、そんなことしたら後が大変だ。
 きっちりと丁寧に畳まれた下着の山の間に、さっきのヤツを押し込んだ。
 んんっ? なんだコレ。
 箪笥の奥のほうに色鮮やかな服があった。乱さないようにそっと出してみる。
あたる「これは・・・水着だ♪」
 青いチェックのワンピース形の裾にフリルのついた、ちょっと上品な水着。それともう一つ、鮮やかな色使いですっごく大胆なヤツだ。
びっくりするほどのハイレグカットで、背中のところが腰くらいまで大きく開いている。
 セクシーな水着はまだ未使用みたいだな。メーカーのタグがついたままだ。Mサイズか。

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