友引町に哀しみの雨が降る (Page 5)
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と面堂に向かって叫んだ。さらに、
「おのれは刀を抜かんと人と会話できんのか!?大体今日はオレが何したっちゅうんじゃい!!」
とあたるは言ったが、面堂は、
「とぼけるな!!了子をどこにかくまっている!?さっさと居場所を教えんとこの場でキサマをたたっ切るぞ!!」
と言った。もう完璧にあたるがやったと思い込んでいる。
これを聞いてあたるは、
「な、何のことじゃ?・・・ちょっ、ちょっと待て!まさか・・・了子ちゃんいなくなったのか!?」
と慌てた様子で叫んだ。すると面堂は、
「お、お前、本当に知らんのか!?」
と戸惑った様子で答えたが、あたるが、
「質問に答えんか!いなくなったのかと聞いとるんじゃ!!」
とさらにきつく言うと、
「うん、いなくなった・・・」
と力なく言った。あたるがさらに、
「なにぃーーっ!?お、おい!いつからおらんのだ!?よく探したのか!?」
と面堂を問い詰めると、
「あ、ああ。いなくなったのは昨日の夜9時過ぎからだ。
黒メガネたちに親戚や了子の友人の家など思い当たる節をあたらせたのだが、どこにも・・・
そこでもしやと思って・・・」
と答えた。あたるは、
「なるほど。それでオレに向かって切りかかったってワケね・・・」
とうなずきながら答えた。
「だがな、オレは本当に知らんのだ。お前に聞いて初めて知ったんだ。
もし知っていたら、のんきにラムのショッピングに付き合ったりせんわい」
あたるは自分が無関係であることを強調した。それから、
「おい、何か心当たりはあるのか?」
あたるは面堂に尋ねた。面堂は「は?」という表情で、
「だから、思い当たる節はすべてあたったと今言ったではないか」
と答えた。するとあたるは、
「そうじゃない!オレが聞いとるのは、了子ちゃんがいなくなった理由についての心当たりじゃ。
お前、何か知らんのか?」
と言った。面堂は知らないと答えた。自分が了子をきつく叱責したせいでとはとても言えなかった。
まして了子をビンタして泣かした、などとあたるに知られたら、了子を探し出す前に袋叩きにされるだろう。
「そうか。ならいい。ところでお前、思い当たる節にはお前自身が直接行ったのではないのだな?」
あたるがこう尋ねると、面堂は、
「ああ。それがどうかしたのか?」
と尋ね返した。するとあたるは、
「だったらもう1回、お前自身ですべて思い当たる節をあたったらどうだ?
もしかすると、了子ちゃんの情を知ってかくまっているという可能性もあるぞ。
それと、了子ちゃんの行きつけの店とかもあたったほうがいいかもな」
と面堂にアドバイスするように言った。まるで本当に容疑者を捜査しているようだ。
「オレも探すの協力してやるよ」
あたるが協力を申し出ると、
「そうか、すまん。何しろ思い当たる節といっても多数あって、私設警察を使えん手前、人手が欲しかったところだ。
今回の捜索は極秘に行わなければならんのだ。もし了子がいなくなったことが世間に知れたら、
『了子を誘拐した』などという狂言誘拐を仕掛ける輩が現れる可能性もあるからな。
でもお前なら大丈夫だ。本当に、今日のところは礼を言うぞ」
このように感謝の言葉を述べた。
「気にするなよ!オレとお前の仲ではないか」
あたるはこう言って快諾した。だが決して面堂のためにではない。了子のためと自分の財布のためである。
これを口実に、ラムへのプレゼントの件をうやむやにしようとあたるは考えたのだ。
そうこうしていると、ラムが2人のほうに向かってきた。こんな会話がなされた。
「ねぇダーリン。ウチ、あのお店にあったワンピ−スとミニスカとイヤリングと、それにネックレス、気に入ったっちゃ。
ねぇ、買ってぇ!いいでしょ?」
「ラム。大変じゃ!了子ちゃんがいなくなった」
「ねぇ、いいでしょ?買ってよぉ!それと、お腹空いたから何か食べに行こうよ!」
「今から面堂と思い当たる節を探すから、お前も手伝え!今面堂がそのリストを作っとる」
「それが終わったら前から見たかった映画を見に行って・・・それから・・・」
「了子ちゃんの写真じゃ!お前はこれを持って了子ちゃんの行きつけの店を片っ端から尋ねて回れ!!」
「そうだっちゃ!テンちゃんにも何かプレゼント買わなきゃ。あっ、新しいブーツも欲しいっちゃねー・・・」
「・・・おい、ラム。お前、何が何でもオレ達への協力を拒むつもりじゃな!?」
「ダーリンこそ、何が何でもウチのショッピングをつぶすつもりだっちゃね!?」
ラムにはあたるの魂胆は見え見えだった。自分が賭けに勝った以上、絶対に買わせてやると思っていたが、
「いいかげんにしろっ!!バカモンが!今はそんなことを言っとる場合ではなかろーが!!
了子ちゃんは誘拐されたのかもしれんのだぞ!?命がかかっとるんじゃぞ!?
それなのに、何が買い物じゃ!!何が『これ買ってぇ』じゃ!!」
あたるにこのように強く言われ、しぶしぶ協力することにした。いくらラムでも、あたるが本気で怒ると怖い。

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