パラレルうる星小説PART1「高校野球編:第1話最初の夏・最後の夏」 (Page 2)
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コースケが前の席から歩きながら言った。朝飯を食べていないのか、あんパンを食べている。
「お前もちゃっかり、ノルマ達成したじゃねえか」
あたるは手であんパンをねだり、食べながら言った。
「じゃあ、宿題も全くしてないのけ?」
「出来るかよ、家に着いた瞬間ベッドに倒れこんだからな・・・」
「じゃあ、これ」
ラムはあたるの横にある自分の机から、数学のノートを取りだし、あたるに手渡した。あたるはラムと親しくなってから、
毎夜、コースケとともにラムに宿題を見せて貰っているのだ。
「おお、いつもすまんな」
「俺も俺も・・・」
コースケがあわてて前の机から数学のノートを取り出すと、あたるの前の席に座って逆さまながらも写しはじめた。
ラムは必至にノートを写すあたるとコースケを見て、悲しいような嬉しいような声で2人に頼み事を言った。
「ねえ、ダーリン。ウチのとーちゃんの夢を叶えて欲しいっちゃ」
「だから、そのダーリンって言うのやめんか。ここはギャグマンガの世界じゃねんだぞ」
あたるは鉛筆を動かしながら、ノートから視線を話さずにラムに応えた。
「だって、ダーリンっていわないと、なんか不自然だっちゃ」
「そんなの気にするな!俺はあたる、来年のエース諸星あたるだ!」
【補足1】
というわけで、今後、キャラの呼称を従来のものと変えさせてもらいます。
あたる・コースケ・・・竜之介は竜ちゃん→藤波、面堂は面堂→修(しゅう)、ラムの父→親父さん、ルパ→黒川さん
ラム・・・あたるはダーリン→あたる、コースケはコースケ
ラムの父・・・あたるは婿殿→あたる、

「で、親父さんの夢ってのは、何だ?」
「甲子園だっちゃ!」
「な、甲子園!?」
あたるコースケは鉛筆を持つ手を止め、あたるは後ろにこけ、コースケは頭を机にぶつけた。
「簡単にいうなよ、甲子園たって東東京だけでも何百校ってあるんだぜ!?そんな中から
ベスト8にいけるだけでも難しいってのに、甲子園かよ?」
あたるは汚れた制服を手ではたきながら起きあがり、椅子によいしょという感じで座った。
「だって、来年のエースなんでしょ?」
「ばーか、俺がエースだからって甲子園に行けるって訳じゃねえんだ。ほかの学校だって、
強いところは甲子園に行こうと、必死なんだ」
「うちらの野球部は必死じゃないっちゃ?」
「まあな、必死にはやっているが、どうしてもベスト8で止まるからな。
モチベーションが下がらないだけマシだな・・・」
放課後
友高野球部のグラウンドは土手を挟んで、川沿いにある。一応フェンスがあるが、
土手を通る人には、練習姿は丸見えである。
「いいか、おのれら!わいらは毎年ベスト8がやっとだと世間にののしられてきたが、
甲子園はあきらめるものじゃあらへん!いつかきっと、きっと甲子園という聖地に足を
踏み込むんや!そのためにはわいは鬼になる!そのわいについてきてくれるか!!?」
珍しくラムの父は準備運動の後、ベンチに何十人といる部員に向かって説教をしていた。
しかし、部員も部員でそれをまじめに聞いている。とくに三年生は燃えていた。
「はい!!」
「なんだよ、もともと鬼じゃん」
そのなかで二人、やる気のないものがいた。読者にも察しの通り、あたるとコースケだ。
「こらー、そこの二人!人の話を聞いとんのかぁ!!ランニング二倍じゃぁ!!」
「ええ、厳しすぎるよ、親父さん!」
「つべこべ言わずにさっさといかんかぁ!!」
二人は渋々とランニングを始めた。その後ろ姿はやる気の無さに充ち満ちている。
ベンチ
「ああ、なんでこうもあの二人はやる気がないんじゃ・・・」
「もともとああいう性格だからね・・・。何かやる気を出すものがいるっちゃよ・・・」
隣でボール磨きをするラムが父の愚痴を聞いていた。
「たとえば?」
「大事な人が死ぬとか・・・」
すると無言でラムの父は帽子を深くかぶり、ベンチを経った。
「ラム、そういうことは冗談でも言ったらあかん」
ラムは何かに気づいたような顔をしてごめんと一言謝った。ラムの目には大きく、また悲しそうな背中が見えた。
そのころ、あたるたちはグラウンド十二周めで、土手のあたりを走っていた。
「あたる、コースケ、罰ランニングか?」
土手の上からの声だった。あたるたちはその場で足踏みをしながら、土手の上をみた。面堂が、土手の上から見下ろしている。
濃い青をしたユニホームが特徴の豪太刀のユニホームを着ている。
「なんだ、修、練習はどうした?」
「練習中だよ、今、校外ランニング中だ」
「あ、さよけ・・・」
「相変わらずやる気がないな・・・、甲子園行く気あるのか?」
「そりゃあ、甲子園に行けるわけないだろーが、今年は東東京に強豪ができたからな・・・」
「一刻商か?」
一刻館商業高校。通称一刻商。選抜で決勝まで上り詰めた東東京の強豪。最後に広島代表の風林館高校に紙一重で負けたが、夏の大会で
大いに期待される高校である。
あたるとコースケの足踏みも知らず知らずの内に終わっていた。

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