パラレルうる星小説PART1「高校野球編:第1話最初の夏・最後の夏」 (Page 6)
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あたるは面堂とコースケをラムと見送った後、とある河原にきていた。
「なんだっちゃ、話って?」
あたるは河原に石を投げて、その波紋を眺めていた。ラムはその後ろでたいそう座りをしている。
「親父さんって何で甲子園いきたいんだ?」
「そりゃあ、高校野球の監督なら誰でも行きたいっちゃ!」
ラムは少しばかり焦り気味に答えた。
「本当にそれだけか?」
振り返りざまに言ったあたるの目にはいつもとは違う光が見えた。ラムはその目を見て焦り気味の顔から優しい顔にした。
「甲子園に・・・忘れ物があるっちゃ・・・」
「忘れ物?」
あたるは投げようとした石を足下に落としてラムの方に体を向けた。
「今から十年前、一度だけ友高は決勝まで上がったことがあるっちゃ・・・」
「えっ・・・」
あたるはてっきりベスト8以上に行ったことがないと思っていた。しかし一度だけ甲子園を巡る戦いをしたことがあるのである。
「覚えてるっちゃ?死んだウチのカーちゃん・・・」
「あ、ああ、ちょっとだけ・・・。でもいい人だったことは覚えてる・・・」
「ありがとだっちゃ。それで、カーちゃんが病院生活の時にその決勝だったっちゃ。とーちゃんは甲子園に連れて行くことでカーちゃんを元気づけようと
してたっちゃ。そして全国制覇をしたらカーちゃんが病気が吹き飛ぶようだって・・・。その言葉でとーちゃんは張り切っていったけど・・・」
「負けた・・・」
「うん、とーちゃんのサインミスで・・・。とーちゃんはショックのあまり病院にも顔を出さなくなって、その間にカーちゃんは息を引き取ったっちゃ・・・」
あたるには悲しいが綺麗な瞳が写った。
「ラム・・・、必ず黒川さんが連れていってくれるさ・・・。絶対に・・・」
「・・・」
ラムの心境は複雑だった。正直な気持ち、あたるに甲子園初出場を成し遂げて欲しいのだ。しかしそのために今年は負けるように願うわけには行かない。
甲子園の忘れ物は誰が取りに行くのか、それは今だ知るよしもない。

PART4[暑い夏]
今日、友高にとっては貴重な試合でもある。準々決勝なのだ。毎年、友高ナインがぶち破れない壁にルパの友高が挑む。
相手は一刻商に続く優勝候補、久能帯刀率いる大垣学院。恐ろしく遅い鋭く堕ちるフォークと高校生とは思えないカーブが武器の投手だ。
『さあ、今日の晴れ渡った空、東東京県予選大会準々決勝、ここへ来て一刻商の対抗馬といわれる二校が激突します。先攻一回戦で
ノーヒットノーランを成し遂げた黒川率いる友引高校、対するは後攻・一刻商の五代に並ぶ防御率を誇る久能率いる大垣学院です。そして今プレイボールが
かかりました!』
球場にサイレンが鳴り、久能は先頭打者竜之介に内角にストレート。バット引っかかったボールはサードの真正面に転がった。そしてファーストへ送球。
しかしボールは少し高くそれ、ファーストの足がベースから離れた。
『ああっと、大垣サードの桐山いきなり悪送球!スコアボードにエラーのランプがつきました』
その後、友高は送りバントでワンアウト二塁。そして三番のルパ。久能は挑発と言わんばかりに、ルパの顔面めがけてにストレートを投げた。
ルパはしゃがんでそれをボールからよけた。久能をにらみ付けると久能は帽子を取ったその顔でにやっとしていた。
友高ベンチ
「絶対わざとだっちゃ!」
ラムがスコアブックを久能に向けた。それをあたるが体を張って止めるが、ラムの爪があたるを襲う。
「ば、ばか爪を切れ!危ねえだろうが!」
グランドでは三番のルパがショートゴロ。二塁、一塁とダブルプレー。
「エラーの後はダブルプレーか、なかなかだな向こうも」
ルパがベンチに帰ってきてラムの父に言った。ルパはグラブを取ると広いグランドの一番高いマウンドに立つとあたるにVサインをした。
あたるもVサインで返事をすると笑顔を作った。そしてルパはラムの父の夢を叶えるため、全身全霊をかけて第一球を放った。
そして0対0のまま四回裏二死、大垣の攻撃が始まろうとしていた。
『さあ、ここで四番の久能です!前の打席では外野フライに倒れましたが、大垣の四番です。次はどんなバッティングを見せてくれるのでしょうか?」
ルパは久能をにらみつけると何やらにやついている。ルパはかちんと来たが、キャッチャーのカクガリに落ち着けとサインを受けた。
『さあ、黒川振りかぶって・・・、投げた!』
ボールは以外にもど真ん中をついた。しかし久能は振らなかった。
『ああっと大胆にも、ど真ん中。しかし久能、はずして来ると読んだか見逃し』
そして二球目、ルパはストライクからボールになるカーブを投げたが、そこに久能の振ったバットがつっこんできた。
『な、ボール球を打ちました、久能!しかしあたりは強烈、センターの頭を越え、長打コース!』
久能は二塁にたどり着いても勢いを止めるが無く、三塁に走った。センターの竜之介が投げたボールはサードにまっすぐ飛んでいったが、すでに久能は
サードにたどり着いていた。

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