パラレルうる星小説PART1「高校野球編:第1話最初の夏・最後の夏」 (Page 3)
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「ああ、三番・キャッチャーの三鷹、四番・センターの四谷、五番・ピッチャーの五代。今年の選抜で決勝まで3失点の究極バッテリーと
予選大会で打率の一位から三位までを独占したクリーンアップ。守備力が自慢のウチでもこの3人からは逃げられないさ。
ましてやヒットを打つなんて。良くて二安打。悪けりゃ、パーフェクト食らうな」
「あきれた。よくそこまで自分の学校を悪く言えるな。しかも黒川さんを尊敬してるんだろ?」
面堂は肩にかけてあるタオルで汗を拭いた。それでも汗は耐えない。
「俺たちはね、いつも冷静に物事を見るようにしてるんだよ。それよりお前、豪太刀の四番になったっていうじゃねえか?今年はムリでも
来年は新聞が騒ぎ始めるぞ」
「トンちゃんもエースになったぞ」
「飛麿が?」
「まあな。トンちゃんはお前と違って、努力家だからな。無駄な練習も多いが、そのおかげでスタミナ切れはない。あいつも俺と一緒に来年の新聞に載るよ。
しかも2人とも大企業の長男、俺たちの会社は大もうけ。そしてプロ野球界に入り、引退したら大企業の社長」
「まあ、何ともいやはやですこと・・・」
「わけのわからん台詞を吐くな。それじゃ、おれはもう行くぞ、練習サボんなよ・・・」
面堂はあたる達に指を指しながら、走り去っていった。
「コラァ、そこの2人!!何さぼっとんのじゃァ!!」
ベンチから竹刀を持った親父が怒鳴りつけている。
PART2[甲子園という三文字]

甲子園に向けての地区予選が始まろうとしている。各学校は甲子園に向けて一段と燃えている。
我らが友高もまた燃えている。監督も燃えている。あたるとコースケは燃えていない。
「行くぞォ。ライト!」
あたるの尊敬する人物・ルパも守備練習に余念がない。四方八方に弾が飛び交い、部員はレギュラーを勝ち取るため、地区予選で勝利をするため、
必至にボールに食いついていた。その中で現在四番最有力候補の一年生、レイが友高の2番手ピッチャー相手にバッティング練習をしている。
カキーンという音とともに、ボールがフェンス外に飛んでいく。球拾い組の一年生は、草の根をかき分け必至に探すが、すぐに飛んでくる球が、
作業を忙しくしていた。むろん、その中にあたるとコースケがいた。
「あたるー」
赤いジャージを着たラムが、何やら険しそうな顔をしながら走ってくる。あたるはボールを一個拾ったところでラムの声に気づいた。
あたるのところに来ると、ラムは疲れ切って息切れをしていた。はあはあ、言っている。
「なんだ、ラム。何か用か?」
あたるはバケツに拾ったボールを入れた。
「キャプテンが・・・、呼んでるっちゃ・・・」
「黒川さんが?」
ルパがピッチングの練習場で、こちらを見ている。

「なんすか、黒川さん?」
キャッチャーを見ながらいった。頬には汗水が垂れている。
「お前、投げてみろ・・・」
あたるにグラブを押しつけた。
「は?えっ、あっ、でも・・・」
しかしあたるはそのグラブを押し戻す。
「いいから投げてみろ・・・」
グラブを強引に渡され、あたるは遠慮がちに受け取るとキャッチャーを見た。カクガリがキャッチャーをやっていた。
「なんだ、カクガリ。お前レフトじゃなかったっけ?」
「いいから投げろ!」
ルパは後頭部を軽く殴った。あたるは軽く頭を触ってから、渋々グラブをはめた。少し型が合わないのか、いろいろと動かしたが、やはり型は合わない。
仕方なしにグラブが気になりながらも前方をみた。
カクガリがキャッチャーマスクをかぶると真ん中にミットを構えた。あたるはルパが横で見る中、緊張気味に投球モーションに入った。
振りかぶり、足を持ち上げ、少し止まると体を前に出しながらボールを投げた。するとあたるの頭の中に中学時代のある思い出がよみがえった。
面堂のバッティング投手をしているとき、面堂の挑発に乗り、全力投球をしたことがあるのだ。
あたるはその記憶がフラッシュバックのように頭の中に瞬間的に浮かび上がった。そして現実に戻るとボールが、手から放れたところであった。
ボールはカクガリが構えたキャッチャーミットから右に大きく離れたが、取れないことはなかった。バンっと大きな音を立てた。
「うっ!」
カクガリには、思ったより手に大きな衝撃が走り、思わず声を出した。
「やっぱりな・・・。お前投手としての素質がある。練習内容によればお前は新聞を飾ることになるぞ・・・」
「んなばかな。だって今、思いっきりはずれたじゃないですか?」
ルパのグラブをはずすと手に持ったまま、手を横に軽く広げ、肘を曲げた。
「コントロールの話をしとるんじゃない。ボールの速さの話をしとるんだ。見たか、今投げたボールの速さを・・・」
ルパは珍しくいつもの冷静な態度ではなく、少し動揺気味だ。カクガリが2人の元に走り寄ってきた。
「いえ、投げた後バランスを崩して・・・」
「俺の目が節穴でなければ、140キロは出てたぞ・・・」

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