パラレルうる星小説PART1「高校野球編:第2話叶う夢・叶わぬ夢(前)」 (Page 1)
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[番外編:パラレルうる星小説PART1「高校野球編」


「黒川さんが・・・交通事故?」
試合を終えて、家に帰って来たところに、ラムの父から電話がかかってきた。あたるの投げた試合は見事が1安打に抑え、
準決勝に駒を進めた矢先のことである。
「え・・・、だって黒川さんは病院に・・・」
「そやから、その帰りやったんや・・・」
ラムの父の元気のない声が受話器から聞こえてくる。
「よ、容態は!?」
あたるの声は焦りに満ちていた。台所の方で湯がポットの中で沸いている。あたるの部屋にはコースケとラム、面堂が集まり、
準々決勝での試合を振り返っていた。笑い声も響くが、あたるの耳には入っていなかった。
今はあたるしか黒川の事故は知らない。
「今、手術やっとんのやが、意識不明・・・。助かるかどうか五分五分やそうや・・・」
「そ、そうですか・・・。ってことは今後の試合は・・・」
「もし、意識が戻っても、動けるようなるんは、十一月ぐらいからや・・・」
「ってことは・・・」
「エース不在や・・・」
あたるは放心状態となり、受話器を落とした。まだ夏の始まった夕暮れのことだった。
そして・・・

第2話「叶う夢・叶わぬ夢」
PART1[その名は・・・]
そして、半年・・・。ルパは意識は回復したものの、下半身麻痺という事実が発覚した。野球はおろか、走ることも出来なくなった。
昨年の夏の準決勝はエース不在の試合、防ぎきれる物も防ぎきれず負けを期した。あたるはルパの後継者として活躍できず、接戦の末敗退。
また、秋季大会も新メンバーで挑んだが、殆どが試合慣れしていない一年生。
準決勝で一刻商に破れた。春の選抜の夢も絶たれた。そして新たな春を迎えようとしている。
友引高校
昨年と同じようにサクラの花びらが舞っている。その花びらに二年生へと進級したあたるとコースケそしてラムが登校してきた。
「黒川さん、なんとか大学受かったんだってな」(あたる)
「ああ、でもそこの大学に野球部はないんだそうだ」
「そりゃあ、そうだろうな。もうすぐ夢が見えてきたのに、あんなことがあったらな・・・」(コースケ)
「だからその夢を2人が背負ったっちゃ!」
ラムがサクラを見ながら言う。あたるも同じサクラを見て少し笑った。始業ベルが校内に響き渡った。
「ほら、まずは授業だっちゃ!」
サクラをぼーっと見ていたあたるはラムの声に少し反応が遅れた。

放課後
あたるとコースケ、ラムは部活に向かう途中の下駄箱にいた。下駄箱の下靴と上靴を入れ替えながらあたるが言った。
「今年の新入生に有望なのはいんのか?」(あたる)
「アホ、これでもウチは強豪なんだぞ。有望な新入生は何人もいるぜ」(コースケ)
「まあ、わかってんだが、去年はレイと竜之介みたいな一年でレギュラーをとるようなやつがいたから、なんかこう、
有望選手の基準がわからんのじゃ」
三人は下靴に履き終え、サクラが舞い散る校庭へ足を踏み入れた。
「まあ、わからんでもないが・・・」
「ラム、お前はしらんか?」
「んーっと・・・。あ、たしか因幡くんが来てるはずだっちゃ!」
「因幡?」(あたる)
「ああ、確か中学んときの決勝戦の相手のショートじゃなかったか?」(コースケ)
「あー、あいつか。面堂の強烈な当たりをとったやつか・・・」
「そいつだ」
「違うっちゃよ!」
ラムが話の根本から否定した。
「だって因幡っていえば・・・」(コースケ)
「その双子の弟だっちゃ」
「双子ぉ〜?」
2人が声を合わせて言った。微妙にハモっている。
「や、野球の経験は?」(コースケ)
「皆無だっちゃ!」
「皆無だっちゃってそれのどこが有望選手じゃ!」(あたる)
「顔がレギュラーに入りそうな顔だからそう思ったっちゃ!」
「顔って・・・、俺とコースケはともかく、レギュラーのくせにチビとカクガリは脇役顔の代表だろうが!」
「そんなこと知らないっちゃ」
「知らないって・・・」(あたる)
「まあ、とにかくグラウンドにいってからだ」(コースケ)
で、グラウンド
「気合いがたらん!もう十周走って来い!」
グラウンドに例の親父の声が響いていた。グラウンドの入り口であたるは目の上に手をかざしてその親父を見ていた。
「オー、オー、やっとる。血圧上がらんのかね〜」
「同感だな」
「これでもウチのとーちゃんの血圧は低いっちゃよ・・・」
あたるとコースケはずっこけそうになった。
「あっと驚くタメゴロー!」
精神が不安定になったあたるが出せる台詞はこれだけだった。
「ええい、貴様いったい何歳だ!知らない読者が混乱するだろうが!」
「気にするな、で、その因幡ってやつどいつだ?」
正気を取り戻したあたるはグラウンドを走っている一年生を眺めた。
「ほら、あそこの茶髪気味で気の弱そうな・・・」
あたるは一目でわかった。
「あ〜、集団の一番後ろにいる・・・」
「兄と違ってレギュラー入りは無理そうだな」
あたるもコースケも期待はしていなかった。
「よう、遅かったじゃねえか」

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