時は夢のように・・・。「第二話」 (Page 1)
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時は夢のように・・・。
第二話『動き出す時間』
三月三十一日、月曜日の朝・・・今日で春休みも終わり。
なんとも気持ちのいい朝だった。俺はまだ寝たりなくて、布団の中でまどろんでいた。
今日が春休み最後の休日なので、ゆっくり朝寝坊を決め込んだのだ。・・・いつもだろって? それを言われると辛いんだな〜。
あたる「(・・・なんか・・変な夢見たな・・。可愛い子が家に来て、一緒に暮らすだなんて・・・。ンな都合のいい話があるわきゃねー
んだよ・・。だいたいラムだってそんなこと・・・。)」
なんて考えていたら・・・突然、部屋のドアが開いた。
「おはよーーっ! いつまでも寝てると目がとろけちゃうぞーっ!」
元気のいい声が部屋にこだますると、バサーッとばかり勢いよく布団がはぎ取られた。
あたる「な、なんだなんだ?!」
「きゃぁーーーっ!」
亜麻色の髪の娘が叫んでいる。
あれは・・・ラム? 違うな・・・唯ちゃんではないか! 夢ではなかったのか?!
布団を腕に抱えた唯は、耳まで真っ赤にして、凍りついたように立ち尽くしている。目線は真っ直ぐ・・・俺の股間を見てる?
あたる「・・・あぁ。」
唯がフリーズしている原因が分かった。昨日は俺のパジャマを洗濯したのだが、乾き具合がイマイチだったので、Tシャツとトランクスだ
けで寝てしまったのだ。
朝の生理現象で、トランクスの股間の辺りがちょっと盛り上がっていた。
唯「ご、ごめんなさいっ! いつも妹を起こしてたから・・・つい、その調子で!」
顔を赤くした唯が、部屋を飛び出して行く。よほどあせったのか、階段で滑ったらしく、きゃっという小さな声と、どこかにぶつけたら
しい鈍い音が聞こえた。
あたる「か・・可愛いいぃ〜〜〜っっ!!」
運動神経はそれほど鈍そうに見えない彼女が、気が動転するあまりに階段で滑る様子を想像すると、ちょっと面白い。
可愛い娘が朝から起こしてくれるなんて、なんだか妙に興奮してしまった。そりゃぁ、ラムにはいつも起こしてもらっているけど、なん
か、新鮮な感じがたまらなかった。
押し入れの中から「ふわあぁ〜〜〜。」っとアクビするのが聞こえた。ちょっと間をおいて、がたがたと押し入れの戸が開き、目をこす
りながらラムが顔を出し、後につづくように、むくれっツラしたテンが起き出してきた。
ラム「・・何事だっちゃ〜?」
テン「なぁんやぁ、朝っぱらからウルサイやんけぇ。」
起きたばかりで、寝ぼけ眼なラムとテンだったが、すぐにいつもの調子にシフトされるのだった。
ラム「ダーリン、おっはよーっ。」
テン「おーーっす。あたるぅー。」
宇宙人ってぇのは、朝はめっぽう強いらしい・・。ってゆーか、こいつら二人が特別なんだろうか・・。
二人に自分の元気を持っていかれたような気がした。ひきつった笑顔で挨拶を返す。
あたる「おっす。」
すっかり目が覚めた俺達は、服を着て階段を下りていった。
*
台所。
台所では、母さんと唯が笑い合いながら、朝ご飯の支度をしていた。
俺達は台所ののれんをくぐる。
唯「あっ、みんな、おはよう!」
あたる「おはよーっ唯ちゃん!」
ラム「おっはよーっ」
テン「唯ねーちゃん! おはよーさん!」
四人が挨拶を交わす所を見て、母さんがくすくす笑った。
母「あらあら、みんな朝から元気がいいわねぇ。」
唯が居るせいだろうか、今朝はなんとなく、空気がいつもと違って感じられた。
それに唯の笑顔は、寝起きでむくれた頭の中を、すっきりと洗い流してくれるようだった。
唯「もう少しで朝ご飯が出来ますから、顔洗ってきてください。」
あたる「は〜〜〜〜〜い(^o^)/」
ラム「ダーリン! 鼻の下が伸びてるっちゃ。」
テン「アホ丸出しやなぁ・・。」
俺達は台所から洗面所に足を向けた。
*
洗面所。
がしがしがしがし・・・。
歯を磨き、口をゆすぐ。そして水を両手に溜めると、ばしゃばしゃと顔に叩きつけた。
タオルでごしごしと顔の水滴を拭き取って、髪型を整える。時折顔の角度を変えてみたりする。
にやにやと薄ら笑いを浮かべて、鏡とにらめっこしているあたる。
そんなあたるの様子を見たラムが、鋭い口調で釘をさした。
ラム「ダーリン、今のうちに言っておくっちゃ。唯にちょっかい出したらどうなるか・・・、分かってるっちゃね?」
あたるは顔を上げ、マジな顔を作りラムの目を見据えた。
あたる「(何を言っておるのだ、ラム。俺が唯ちゃんに手を出す訳がなかろう! 俺はただ、唯ちゃんが安心して楽しく生活できる様に
と、心から願っておるのだ!)
へへ〜〜んだっ! あんな美女が一つ屋根の下で暮らしておるのだ、チャンスさえあればラムの目を盗んで、唯ちゃんとあんな
コトやこんなコトをしてやるのだ! ふはははははっ!」
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