時は夢のように・・・。「第四話」 (Page 1)
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 時は夢のように・・・。
 第四話『はっぴいバースデーあたるさん。』

 唯が家に来てから、半月が過ぎた。四月も半ばの日曜日だった。
 俺と面堂は商店街の喫茶店にいた。ラムの追跡を撒いたところで面堂と偶然会ったのだ。
面堂「なぜ話しの最初から、この僕が諸星なんかと喫茶店でお茶をせねばならんのだ・・っ!」
 喫茶店の椅子に腰掛けた面堂が、苦虫をかんだ様な表情で溜め息混じりにつぶやいた。
あたる「しょうがないじゃん、面堂。コーラもう一杯いいか?」
面堂「諸星、おまえ誕生日4月13日だったな。牡羊座か・・・相性がいいのは同じ牡羊座か、天秤座・・・んっ、ラムさんは何座だ?」
 俺の話しを無視して、面堂は置いてあった雑誌をパラパラとめくった。
あたる「ラムの星座は確か『虎縞一角獣座』だったかな。」
面堂「虎縞一角獣座? 地球の星座には当てはまらんな・・。じゃあ唯さんは?」
あたる「唯ちゃんは、確か・・。」
 俺はポケットから手帳を取り出して唯のデータを探した。自慢じゃないが、この手帳には今まで出会った全ての女の子のデータが詰まっ
ているのだ。でも、先週、唯ちゃんに紹介された娘、中山沙織っていったっけ・・、あの娘のデータが入っていない。今度会ったら絶対住
所と電話番号を聞き出しちゃる。
 『い』の欄のページを数枚めくると唯のデータが目に止まった。
あたる「あったぞ。知りたいか?」
面堂「ぼ・・ぼかぁ別に唯さんの個人情報を知りたいなんて・・思わんっ!」
 そっぽを向いて、つーんと口を尖らせる。
あたる「あっそぉ、じゃいいよ。ぼかぁ喉が渇いたなぁ〜。」
面堂「すいませーーんっ! コーラ一つこっちにおねがいしまーーすっ!」
 遠くにいるウエイトレスに手を振りながら叫ぶ面堂。少々ヤケクソ気味だ。
あたる「やだなぁ面堂クン。これじゃ要求したみたいじゃないか。」
面堂「ところでぇ、諸星くぅん。」
 ニタニタしながら、口に出さないが間違いなく唯のデータを催促している。
あたる「分かったよ、誕生日と星座だけだぞ。唯ちゃんは11月2日生まれ、蠍座だよ。」
面堂「11月の蠍座・・。」
 じーーっと占いのページを見入る面堂。しばらくすると、がっくりと肩を落とした。どうやら結果が良くないらしい。
あたる「そうがっかりするなよ。占いなんて信じてないんだろ? まえに言ってたじゃないか。」*1:コミックス「星座はめぐる」参照。
面堂「そうっ! 占いなぞ信じてたまるかっ! バカげてるっ!」
 えらい大きな声で面堂が吠えた。
 俺たちが顔を突き合わせて、星座を組み合わせた『あなたの春の恋占い』のページをマジになって見ていると、俺たちの背後からオホン
ッ、と咳払いがした。
パーマ「お前ら、占いにはまってるのか? ちょっとばかし女の子チックじゃないか?」
 俺と面堂は同時に振り返った。
あたる「パーマっ! 奇遇だなぁ。」
パーマ「通りを歩いてて、二人を見かけたんで寄ってみたんだ。男同士で恋愛占いなんか見ちゃって・・アヤシイやつらめ・・。」
 面堂があたふたしながら本を定位置に戻した。
面堂「ご・・誤解するなっ! ぼかぁ別に・・っ!」
パーマ「・・・・・。」
 しどろもどろな面堂を、パーマは冷やかに見やった。
パーマ「ま、いいや。今の事は俺の胸の中にだけしまっておいてやるよ。そぉだな、後で牛丼を奢ってもらうって事で・・。」
面堂「貴様ぁ・・。」
あたる「ところでパーマ、こんなところでナニやってるわけ?」
 わなわな震える面堂を横目に、俺はパーマに尋ねた。
パーマ「いやぁ、実は2時に新宿でミキちゃんと待ち合わせしてんだよ。だから牛丼は今度でいいから。」
 パーマは手帳を出して、なにやら書き込んだ。
 今日の日付? なになに・・・『面堂とあたるに貸し。牛丼大盛り玉つき。』だって?
あたる「このヤロっ、デートの邪魔してやろかっ。」
 パーマが後ろを向いたときに、面堂に耳打ちした。
 ちょっとくらいいたずらを仕掛けたところで壊れる心配もなさそうなカップルだから、安心してちょっかい出せるんだな。
 俺たちは喫茶店を出たところで別れた。
 駅に向かうパーマを、面堂と俺はこっそり尾行する。
 西部池袋線上り準急電車がホームに滑り込んできた。
 パーマに見つからないように、同じ電車の別の車両に乗り込む。
 途中、池袋でJR山手線に乗り換えて、新宿まで30分くらい。
 立ってるのは別に苦じゃないが、退屈だ。
 俺は座席に置き忘れてあった雑誌を広げた。別に意識はしてなかったんだけど、開いたページは恋占いのページだった。
あたる「面堂も牡羊座だっけ?」
面堂「もういいっ!」
 ふんってな感じでそっぽを向かれちまった。面堂のヤツ、そーとートラウマになっとる。
 そして・・・。
 新宿駅東口、1時50分。パーマは改札前にある伝言板の前に立った。俺たちはちょっと離れた所で柱に隠れるようにして、様子を見守
っていた。
面堂「なんの動きも無い・・。」

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