高校野球編:第三話 最初の挑戦・最後の挑戦(中編) (Page 1)
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高校野球編:第三話 最初の挑戦・最後の挑戦(中編)



PART1「彰の実力」
「しかし、うさんくさいやつだったな」
彰と出会ったその日の練習後、夜中になってやっと帰路に就くことが出来る。
「ああ・・・。あーゆー性格ってのは以外と才能あるもんだ。あたる、決勝は用心しとけ」(コースケ)
「新聞にも載っていない無名野郎だろ?」
「あいつの話聞かなかったのか?一回戦しか登板してない非常識エースだ。あいつの本当の力はわからん」
あたるはやっぱり興味なかった。ルパの従弟だからといって恐れる必要がないと考えていた。
「ま、今度の決勝は楽勝だな。やっと面堂と戦えるってもんだ」
あたるは既に県大会の先、甲子園のことで頭がいっぱいだった。
しかし・・・。

翌日
決勝も近いと言うことで、練習は午前のみ。しかし、あたる、コースケが親父に呼び出された。ついでにラムもついてくる。
「なんすか?」(コースケ)
「ちょっとコレ見てみい。一刻商の選手データじゃ」
親父が連れてきたのはラムの家だった。つまりラムはついて来る必要もなく、この話を聞けるわけだった。
ラムの家でソファに座らされて、向かいのソファに親父が座るような配置だ。
手渡された紙には一刻商の選手の名前、打率、試合時の活躍、長所短所が大まかにかかれている。
その紙を見ていきなりコースケが「あっ」声を上げた。
「どうした?好みの男でもいたのか?」(あたる)
あたるはからかうように高い声を出しながら言った。
「馬鹿者。冗談いっとる場合ではない。これを見てみろ!」
コースケはその紙のある人物を指さした。コースケの指に刺された人物はあの彰だ。
「ああ、黒澤明がどうした?」
名前を毎回間違えるあたるをみて、コースケが一言。
「お前、わざと間違えとらんか?」
「なんじゃお前ら知り合いなんか?その黒川ってやつ・・・」
親父が横から質問した。
「ええ、まあ・・・。黒川さんの従弟で、この前ウチのほうへ偵察に・・・」
「来おったかいな、そんなやつ」
親父は頭を人差し指で軽く突っついて、考え込んだ。
「ああ、それは俺とメガネとコースケが、校外ランニングに行くって嘘ついて公園に連れて行って尋問したんです。その時名前とか、黒川さんの従弟
 とかいろいろききました」
あたるがにこやかに親父の質問に答えていった。すると親父の動きが少し止まった。
「お前いまなんちゅーた?」
「だから、公園に連れていって・・・」
「その前じゃ!その前になんちゅーた?」
「校外ランニングに行くって・・・」
あたるの顔はにこやかな表情から顔中に汗がたれ始めた。コースケもこっそりとソファの後ろに降りて、忍び足でその場を去ろうとするが、
親父に捕まった。
「おのれらァ!!校外ランニングっちゅーのは嘘やったんかぁぁ!!」
その後、親父にもみあげを引っ張り上げられたり、関節技を怪我するぎりぎりに、それぞれ手加減せず喰らわせた。
両人の叫び声がラムの家の中を飛び回り鼓膜が激しく揺れる。
三人がごたごたやっている内にラムは耳栓をしてそのデータ表を拾うと、彰のデータを読み上げた。
「打率6,12、全試合出場、四番としての活躍はホームラン四本、ピッチャーとしての活躍は一回戦から準々決勝までを完投完封。
 バッターとしては何処に投げてもヒットを打ち、その八割が長打。六割がタイムリー」
関節技を喰らって雄叫びを上げているあたるの声が止んだ。正確には親父の関節技が解けたからであるが、同時に別の理由で声を止めたのだ。
「・・・」(あたる)
「俺も一回あいつのプレーを見たが、あいつは十年に一度の天才や」
黙り込むあたるの横で親父が見た感想を伝えた。。
「あ、あいつ・・・」(あたる)
「・・・なんじゃ?」
「あいつ!一試合しかでてないと嘘つきやがって!!試合であいつには全打席150qデッドボールじゃぁ!!
 見てろ、クソガキ!お前に死ぬ程痛い目に遭わせてやる!グワッハハハハハハ!!」
あたるのイノシシの断末魔の様な笑い声を三人は耳をふさいで、その被害から体を守ろうとした。
それでもあたるの狂った笑い声はある意味超音波だ。少し気分が悪くなる。
笑い声は三十秒程続いたが、そのうち貧血を起こしたのか、不細工な笑い顔のまま倒れた。
コースケは少し改まったかのような咳をすると、ラムと親父に向かって言った。
「しかし、なんでそんなやつが新聞にのらないんでしょうか?」(コースケ)
コースケは落ち着いた声で言う。関節が痛いのか、腕を少し抑えている。
親父は少し首を傾げて、暫く考え込むとコースケを軽く指さして答えた。
「お前ら新聞みとるんか?」
「ええ、テレビ欄と四コマ漫画を」(あたる)
突如、起きあがったあたるに三人は驚くが、話を元に戻す。
「スポーツ欄はどうや?テレビでもええ。他の高校の結果とか・・・」
「見てません!」
「他のナインと他の高校の会話は?」
「してません!」
2人揃って全てきっぱりと言った。
「知ってるほうが異常じゃな」


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