時は夢のように・・・。「第七話」 (Page 10)
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 背後にいる唯の様子が、少しばかりちがうもんだから、俺は振り返ったんだ。
 次の瞬間、ドンっと胸に衝撃が走った。衝撃と言っても全然痛くもない。
 俺の胸の中に、唯が飛び込んだのだ。
あたる「唯ちゃん? ど、どうしたの?」
唯「そのまま聞いて・・。わたし、あなたのこと心から信用してる・・・ううん違う、この気持ちは・・・安心できるの。あたるさんがい
  てくれるだけで・・。すごく心地いいの・・・でも、あなたとラムさんのことを考えると、心が叫んで・・痛くて・・どうしようもな
  くなっちゃう・・。それでもわたし、心が抑えきれなくなって・・。 ・・・あなたが好き・・。」
 その瞬間、俺は凍りついてしまった。
唯「ご、ごめんなさいっ。あっ、わたし、あ、あのっ、バイク見てくるからっ!」
 バッと俺から離れると、唯はそう言って、庭の方へ走っていってしまった。
 俺はちょっとギクシャクしながらポストを覗き込む。パニくってて、手紙が入ってるかなんてわかりゃしない。
あたる「・・唯ちゃんが、俺のこと・・? はははっ、夢だよな、こりゃあ!」
 カクカクした動作で、ドアノブをとって、引っ張った。
 ドアの向こうには誰もいなかったが、俺は、一瞬、虎縞のブーツが二階の影に消えていくのを見逃さなかった。
 まさか・・・今の会話を聞いてたのか?!
 俺は瞬間的に悟った。
あたる「ら、ラムっ!」
 すごく焦ってたもんだから、玄関が泥まみれだってことも忘れて、玄関を上がるとき靴を脱いでしまった。床に足が着いたとたん、泥に
足を取られて思いっきりすっ転んだ。くそっ、二回目だぞっ。
 そんなこと、もうどうでもよかった。泥まみれになりながら、俺はラムの後を追って二階に上がっていった。
 部屋の前に着くと、ドアを勢いよく開け放つ。
あたる「ラムっ、話を聞いてくれっ。・・っ!」
 それだけ言うと、俺は次の言葉が出てこなくなってしまった。
 目を真っ赤にさせて茫然と立ち尽くしているラムが、俺の視界を覆ったのだ。
ラム「ダーリン・・・さっきの唯との話、なんなんだっちゃ?」
 憮然とした声の中には、しかし押し殺された悲しみがあるのを、俺は感じた。


エンディングテーマ:Dancing Star
                                               第七話『滅びの序曲。』・・・完

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