時は夢のように・・・。「第七話」 (Page 9)
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 かなりヤバイ状況になってきたぞ・・。最悪なシナリオが現実味を帯びてきた。このままだと、流れ的に正当な理由でラムに拉致られて
しまうぞ。
 考えれば考えるほど、さらに気分が滅入ってきた。
 俺は唯に目配せすると、唯は目を合わせた途端、なぜか顔を赤らめ、
唯「こ・・・ここがあるじゃない。」
 と手前のドアを指差した。
『ユイ』
 白木の小さなプレートがかかってる。いうまでもなく、唯の部屋だ。
あたる「ちょっと待ってくれよ、じゃ、自分は出て行くつもりなのか?! そんなのイヤだからな、俺は絶対に廊下で・・・。」
ラム「ウチのUFOで・・。」
唯「わ、わたし、出ていかないよ。」
あたる「・・・は?」
唯「無理すれば、みんなで住めないこともないと思うの。だから・・・その・・・。」
 とゴニョゴニョ。
 俺とラムが意味を理解したのは、5秒ほど後だった。
 ・・・ほっ、本気か!?
 めちゃくちゃ期待を込めて、俺は唯を見つめてしまった。
 視線の先で、唯は火がついたように顔を赤らめると、
唯「ほっ、ほら! 二人とも、ちゃっちゃと片付けしちゃおうっ。」
 と無理やりにニコニコ。
 誤魔化したい気持ちはわかるが・・。
ラム「唯ったら、自分がなに言ってるのかわかってるっちゃ?」
唯「だ、だって・・・仕方ないでしょ。わたしって、家賃を払ってる訳じゃないから、極端な言い方をすれば、単なる居候なワケだし・・
  ・。家主の息子さんを廊下で寝かせて、自分は無事だった部屋でぬくぬくと・・・そんなことできるわけないわ。」
ラム「でも! ダーリンと一緒な部屋で生活なんて、ずえーーーったい危ないっちゃ!」
あたる「おまぁな! 俺をなんだと・・っ!」
 ラムの言った言葉にムカついて、声を荒げた時だった。
唯「・・・大丈夫。わたしは、ラムさんと同じくらいあたるさんも信用してるから。」
 俺の目を見て、ニコッと微笑む。
 そして鼻の辺りを赤くしたままで、ラムをねめつけた。
 うわ、まずい。これはケッコー本気だぞ?
ラム「唯がそこまで言うんだったら・・・ウチは別に・・。」
唯「そ、そお? じゃあ決まりね?」
 ちょっとホッとしたように唯。
 唯は荷物を入り口の傍におくと、俺の腕を取って、
唯「あたるさん、下についてきて。タオルとか雑巾とか・・・使えそうなもの取ってきましょ?」
あたる「う、うん。わかった。」
 靴を履きなおして、俺は唯の後についていった。
 平静を装って階段を降りていた俺だが、心の中ではこう叫んでいた。
 うおおおお、やったぜーっ! ついに夢の実現だ!
 今まで、俺と唯ちゃんの間にはなんの変化もなくて、無性に苛立ってたんだ。やっとチャンスがおとずれた! ここでなんとかキメられれ
ば・・!
 ところが、前にも言ったかもしれないけど、唯には俺の煩悩を封じ込める不思議なパワーがある。煩悩に対するアンテナがあるみたいで
、階下に下りると、唯はクルっと振り向き、
唯「先に言っておくけど・・・同じ部屋だからって、エッチなのはダメだからね。・・信用してるんだから。」
あたる「す、すんません。」
唯「あっ、ごめん。ちょっとだけバイク見てきていいかな。ごめんね。」
 両手を合わせて、はにかむ唯。
あたる「じゃ、俺は郵便受け見てくるから。」
 俺たちは、ドアを開けて、屋外に出た。
 うーん、あっさり釘を刺されてしまった。あっさりすぎて、軽口を叩く余地もない。
 でも・・・ま、いっか。今はそんなこと企んでる場合じゃないし。
 そして、“今回最大のトラブル”は、俺が唯から背を向けた時に起こった。
 唯の足音が、俺の背後でピタッと止まると、
唯「あ、あのっ・・・あたるさん? こんなときになんだけど、今のうちに聞いてほしいことがあるの・・。」
 唯の、声のトーンが変わった。

 二階では、ラムとジャリテンがせっせと俺の部屋から荷物を移動している真っ最中だ。
テン「ふーっ、やーっと終わったで〜。」
ラム「テンちゃん、ごくろうさまだっちゃ。後でご褒美に、おいしーいおやつ用意するっちゃね♪」
テン「わーいっ、おおきにー♪」
 ポンポンと弾んで喜ぶテン。
ラム「じゃ、テンちゃんは休んでていいっちゃよ。ウチ、ダーリンたちのお手伝いしてくるっちゃ。」
 ラムはドアのノブを押した。部屋から出ようとした時だった、
テン「あ、ラムちゃん? あたると唯ねーちゃんを一緒の部屋で生活させて、ホンマにえぇんかぁ?」
 ラムの顔が少し影った。
ラム「平気、大丈夫だっちゃよ。ウチだってダーリンのこと・・・信用してるもん。」
テン「ラムちゃん・・。」
 くるっとテンに背を向けると、階段を降りていった。
 階段を降りると、すぐに二人を探すラム。でも、ほとんど探すこともなく、見つけることができた。
 玄関ドアの向こう側で、二人の話し声が聞こえたのだ。
 ラムは、ドアノブに手をかけて開けようとした、その時、ふと、二人の声が耳に入って、動きを止めた。


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