時は夢のように・・・。「第七話」 (Page 6)
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しかし・・・唯にとって悪いことは続いた。ゴロゴロって雷鳴が響いたかと思うと、急に部屋が真っ暗になってしまったのである。
突然だったので、俺も少し慌てたが、考えてみれば原因は単純だ。落雷が、どこかの変電所を直撃したか・・・要するに停電である。と
にかく真っ暗になってしまった。
でも面白いのは、それからだった。
唯「キャーーッ! なになに、どうなったの!? もうっ、なんなのよォ!?」
暗闇に唯の悲鳴が上がったかと思うと、続いて、ドカッと音がして、
唯「いったーい!」
ラム「唯っ、痛いっちゃよぉーっ!」
な・・なにやってんだ?
あたる「こら、動き回るな! ただの停電だ、停電! 落ち着けよ!」
唯「あたるさ〜ん、痛いよ〜! もう死んじゃう〜!」
ラム「泣きたいのはこっちだっちゃ!」
部屋の隅から、情けない声が聞こえたのも束の間、すぐに、
唯「キャーッ! いるいる、なにかいるよ!! 光ってて・・きっと目だわ! やーん!」
続いて、何か柔らかいものを投げる音が伝わってきた。
反応は、すぐにあった。
「いだぁぁーーっ!!」
ラム「光ってるって・・テンちゃんだっちゃよ、それ!? 大丈夫け、テンちゃん?!」
唯「もういやいやいやいやっ! テンちゃんなんか大っ嫌い! みんな嫌い!」
テン「ゆ、唯ねーちゃん・・そりゃあんまりやないけぇ〜(泣)。」
俺たちを代表してジャリテンが語ってくれた。
ラム「っんもぉーっ! 世話が焼けるっちゃ!」
ラムは手探りで窓際まで進むと、思いっきりカーテンを引いた。
月明かりなんて洒落たものは差し込まなかったけど、少しはマシになった。
しかし・・・運が悪かった。闇を切り裂いて、稲妻の光がほとばしり、部屋を埋め尽くしたのだ。
唯「キャーッ! またピカッて、ピカッて〜! もう・・・わーーん!」
たった一瞬のことなのに、部屋の隅で、ついに唯が泣き出したからたまらない。しかも散らばっているものを、手当たりしだい投げてき
た。ゲーセンでとった縫いぐるみや、消しゴム・・・掴めるものなら、何でもだ。
あたる「おわっ! おい、やめろって!」
俺は恐ろしくなった。
パニックとヒステリーが一緒くたになっちゃってる。このままだと・・・マジで死人が出かねない。本を投げられたって、打ちどころが
悪いと死んじゃうらしいからな。
あたる「落ち着け、落ち着けっ! これから蝋燭とってきてやるから! なっ?」
俺はわめいた。
唯はやっと手を止めると、涙目で、
唯「・・・本当?」
あたる・ラム「ホントホント。(だっちゃ。)」
さっきの繰り返しだが、俺たちは頷いた。
唯「じゃ、早く行ってきてよ〜!」
あたる「わかったわかった、今すぐ行くから、これ以上俺の部屋を荒らさないでくれよっ!」
一応釘を刺して、俺はドアを引いた。
*
蝋燭の光は、人の心を和らげる効果があるという。
30分ほど前までは、ギャーギャーやっていた唯だったが、俺が一階から蝋燭を発掘してくると、次第におとなしくなっていった。
今、目の前にある顔は、まだ少し青いが、いつもの唯のものだ。
唯「あの・・・さっきはごめんね。」
体育座りの唯は、決まり悪そうに笑った。
皿の上に置いた蝋燭の火が、下から唯を照らし、絶妙な造形の顔に影を作っていく。炎が揺らぐたびに影の位置が変わり、いつもの唯と
は雰囲気が違って見えたので、俺は妙にドキドキさせられた。
しかも、唯は知ってか知らずか、はだけた襟元から胸の谷間が覗いている。その陰影のつき方が、これまた何とも柔らかそうな・・!
ラム「気にすることないっちゃよ。誰にだって、苦手なものはあるっちゃ。」
うわっ、ラムのことはあまり気にしてなかったけど、今のこの状況にビキニスタイルってのも、すごくイイっ。
蝋燭って魔物だな・・。人を変える魔力があるぜ。
ラム「・・ねっ、ダーリン。」
あたる「そ、そう。そうだぞ。気にすんなよ。」
変な気になりかけてた俺は、顔を背けながら答えた。
カーテンを再び閉めなおしたから部屋は暗いが、ピカッてのはなくなったし、蝋燭の光のおかげで、少し落ち着いた感じがある。あちこ
ちに散らばってる俺の私物は・・・仕方ないから、明日片付けるとするか。
唯は、やっぱり外が気になってるようだったが、こっちに向き直ると、
唯「ね、これからどうしよっか? トランプでもする?」
ラム「うふふふ、なんだか修学旅行みたいだっちゃね。」
何かやって気を紛らわせたいんだろう・・・ラムも笑いながら答えた。
唯「あっ、あたるさんとラムさんって、今年だったわよね? どこ行くの?」
あたる「京都。ウチのガッコは、いつも同じところ。」
ラム「だっちゃね〜♪ 今から楽しみだっちゃ♪」
唯「あーっ、京都行くんだ? いいなっ。」
あたる「いいなって・・・二人はついこの間、沙織ちゃんと行っただろ?」
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