Welcome To Another World(Chapter 18&19) (Page 10)
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「・・・結構なお手前でした。飛鳥、お前も茶を立てるのが随分うまくなったな・・・」
「お褒めの言葉、大変嬉しう存じ上げます・・・」
もうお分かりいただけるだろう。この男の正体は面堂である。
彼はアメリカの大学を卒業後帰国し、その直後水乃小路家の令嬢飛鳥と結婚した。その結婚式は了子と飛麿のものと同時に行われた。
飛鳥は母親によって課せられた男性恐怖症克服プログラムを受け続け、17歳のときようやく男性恐怖症を克服した。
強大なパワーのコントロールの仕方も覚え、お茶を立てているときに茶碗を粉々にしてしまうこともなくなった。
短大に行き、一般常識もしっかりと身につけた。もう「結婚って何ですか?」などと言うこともない。
そこにメイド服を着た若い女が現れた。
「奥様・・・完太様と成子様が泣き止まないのですが・・・」
女は困った表情でそう伝えた。
「きっとおなかが空いているのね・・・わかりました。すぐそちらに行きます」
そう話す飛鳥の表情は、もはや少女の顔ではなく、妻の、そして母親の顔であった。
普通こういう富豪の家においては、子育ては乳母の仕事である。
しかし飛鳥が「子供は自分の母乳で育てたい」と言ったため、まことに異例であるが、このようなこととなっている。
ちなみにこの2人も二卵性双生児である。完太が兄である。
飛鳥が部屋を出て行き、一人ぼっちになった面堂は考え事をしていた。
(そういえば・・・諸星とラムさんは・・・元気にしとるかな・・・?)
ちょび髭をもてあそびながら彼がこのように考えたのはただの気まぐれではなかった。現在彼は宇宙開発事業に力を入れている。
少し前に完成した日本初のUFOが離着陸できる空港の工事に当たったのも、彼が現在父親から任されている土建会社であった。
これにより宇宙旅行が夢ではなくなった。現在月などへの定期便を設定しようと計画している。
「諸星・・・とうとうわれわれ地球人も宇宙旅行ができるまでのレベルに達したぞ。
今はまだ太陽系の惑星までで精一杯だが、そのうちにお前が住んでいるはずの鬼星まで定期便を出すからな。
首を洗って待ってろよ。そしてラムさん・・・あなたは今、幸せですか・・・?」
障子を開け、そこから空を見つめながら、面堂は独り言を行った。そして葉巻に火をつけた。
そしてチェリーは・・・8年前と何も変わっていなかった。相変わらず町内の空き地で野宿をしていた。
「そら、ネコや、メシが煮えたぞ」
チェリーはそう言うと、コタツネコに茶碗を渡した。そこに友引高校「元」校長が現れた。
「おお・・・オヌシは・・・」
「私も仲間に入れてくれませんか・・・?」
彼はそう言うと、コタツ猫の隣に座った。そしてコタツネコに茶碗を渡された。
「なかなかおいしそうですね・・・」
鍋の中を見ながら、彼はこう言った。
いかがでしたか?地球にいる皆さんは、それぞれ違う道を歩んで、それぞれが違う生活を送っています。
でもね、あたる君、ラム。私を含めて、彼らの心の中には1つだけ共通する思いがあるんですよ。
それは・・・あなたたち2人に帰ってきて欲しい、今の地球をあなたたちに見てもらいたい、そんな思いです。
今度友引町の近くに、UFOが離着陸できる立派な空港ができました。ですから、いつ帰ってきても大丈夫ですよ。
8年もあなたたちの顔が見れないなんて、寂しいです。あたる君。ラム。どうか私の娘の顔を見にがてら帰って来てください。
私を含めた仲間達みんなで、あなたたちのことを歓迎しますよ。待ってますからね。
その頃あたるはUFOの操縦桿を握っていた。その横には小さな男の子がいた。
「ほーら、あれがパパの生まれ育った星だぞー、こける」
ヒゲ面のあたるは、横目で男の子のほうを見ながら地球を指差し言った。男の子の頭には2本の角があった。
髪は緑色で、目つきは母親であるラムに似ていた。
「こける。あの星はね・・・パパとママが初めて出会った思い出の星なんだっちゃよ・・・」
チャイナドレスを着たラムがこけるに後ろから抱きつき、頬ずりをしながらそう話した。
まだ幼いこけるは、両親の言っていることの意味がすべては分からなかった。
しかし、青く光り輝く星の美しさは十分に感じたらしく、窓越しに地球を食い入るように眺めていた。
あたるとラムも、8年ぶりの地球上陸を目前にして、心が躍っていた。
The end

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