Welcome To Another World(Chapter 18&19) (Page 9)
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「だから何でそんなところに行く必要があるんだよ!?第一金はどうするんだよ!?」
怒鳴る竜之介に、渚は分厚い封筒を差し出した。かなりの大金が入っていた。
「な・・・渚・・・おめえ、これどうしたんだよ!?」
その金額を見て竜之介は驚いた。
「心配しないで。これはちゃんとした方法で得たお金よ。今まで私がへそくりして貯めたの」
微笑みながら渚は言った。
「おめえ、いつの間に・・・まあ、これで金は何とかなるってことか」
「きゃあ、竜之介さま!じゃあ、オランダには行くのね!?私と一緒に行ってくれるのね!?」
「まあ・・・たまにはいいか・・・」
「キャーッ!嬉しいっ!」
歓喜の声を上げ、渚は竜之介に抱きついた。
「こ・・・こらっ、よせよ!・・・でもおめえ、何でオランダなんだ?なんか理由でもあんのか?」
渚を振り払いながら、竜之介は訪ねた。
「私は身も心も女に、竜之介様は身も心も男になるために行くのよ」
竜之介は最初、この意味が分からなかった。
「どーゆー意味だ?」
「つまりー・・・性転換手術に行くのよ!日本でやるより安くつくから」
「な・・・何イーーーッ!!?」
これを聞いた竜之介は仰天した。そしてその場から逃げ出そうとした。
「待って、竜之介さま!私たち、これで晴れて正常なカップルになれるのよ!お願い、協力して!!」
しかし渚はすぐに竜之介を捕まえ、チョークスリーパーをかけた。
「イ・・・イヤだあー・・・!!オレは・・・女だああ・・・!!お、親父い・・・何とか言ってくれ・・・!!」
竜之介はもがきながら、竜之介の父に助けを求めた。
「安心せい、竜之介。ワシがしっかり留守番をしておいてやる。何の心配もいらん!行って来い、オランダへ!土産は忘れずにな」
父は見当違いの返事をした。
「バ・・・バッキャロー・・・!!」
竜之介の叫びは校長室まで聞こえた。
「何でしょう?今の声は・・・」
「気にすることはありませんよ。いつものことですから」
あたるたちの結婚式の司会進行も務めたあの校長は定年退職し、今年から温泉マークが校長となっていた。
9年前にあたるたちの担任を務めて騒ぎには慣れていた彼にとって、今のようなことは別段珍しいことではなかった。
(そうか・・・来年度から三宅がうちに赴任するのか・・・また、賑やかになりそうだな・・・)
温泉は新聞の人事異動の欄にかつての教え子の名前を見つけると、白髪交じりの頭を掻きながらそう思った。
「校長。それで、私のクラスの、この前校内で喫煙をした秋元のことなんですが・・・」
どうやらこの教師の受け持ちの生徒が不始末を犯したようだ。そこでどうすればいいか意見を伺いに来たというわけだろう。
「ああ、彼のことですか・・・彼は古い言葉を使えば、やんちゃな子ですからね。
9年前に私が担当したクラスにも1人、そんな子がいました」
「は?」
教師はなぜこんな話を始めたのか分からなかった。
「他の生徒に対して示しをつけないわけにはいかないでしょう。まあ、自宅謹慎一週間ですね。
でも、彼はきっと寂しかったんでしょう。あなたに構ってもらいたかったんですよ。
謹慎中に最低一回、家庭訪問に行ってあげなさい。そして彼と話してみることです。
そうすれば、問題は解決するでしょう。でも、何でこんなことをしたんだなんて、言っちゃだめですよ」
「分かりました。そのようにやってみます」
そう言うとこの教師は校長室から出て行った。
「まだまだ・・・あいつに比べれば・・・そういえばあいつは・・・元気にしとるかな・・・?
あいつの扱いに四苦八苦したことも、今となってはいい思い出だな・・・そう思わんか?諸星・・・」
温泉は窓の外を見つめながらそう呟いた。
「あなたー、あなたー!いたら返事なさってくださいな!」
ここはどこかのフィットネスジムである。了子はここにいるはずの自分の夫を呼んでいた。
「何だ、了子。騒々しい・・・せっかくベンチプレス50キロに挑戦しようと精神統一しておったのに・・・」
そこには飛麿がいた。了子は水乃小路家に嫁入りしていた。これにより長い両家の対立には終止符が打たれた。
「今日はとってもよい知らせがございますのよ。あなた、お耳をお貸しになってくださいな」
「こうか?」
了子に言われるままに、飛麿は耳を了子の口に寄せた。すると何を思ったのか、了子は耳ではなく頬にキスをした。
「な、何をするんだ了子!は、はしたない!」
飛麿は驚きそう叫んだ。
「まあ、照れちゃって!冗談ですわよ!本当は・・・」
この後の彼女のセリフを聞いて、彼はしこたま驚いた。
「ほ・・・本当なのか・・・!?」
「ええ。お医者様がそうおっしゃられましたわ。私のおなかの中には男と女の双子がいますのよ」
微笑みながらおめでたを報告した。
一方ここは都内のとあるところにある豪邸内の茶室である。
「あなた・・・お茶が入りました・・・」
「うむ・・・ではいただくとしよう」
オールバックの男は茶碗を回し、お茶をすすった。
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