Welcome To Another World(Chapter 18&19) (Page 7)
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頭がおかしくなりそうな変な出来事に悩まされない平穏な生活を得るために払われた代償は、余りにも大きかったようです。
ただひたすら過ぎていく平凡な毎日・・・失われる青春・・・否応なく巻き込まれる受験地獄・・・
はっきり言って退屈そのものでした・・・高校3年の時間は・・・
そして大学入学。いろいろ大変なこともあったけど、あなたたちが巻き起こしたトラブルの数々に比べれば、
何ということもありませんでした。大学での4年間も、そうしてただなんとなく過ぎていきました。
そして今は、私は高校の国語科の教師をしています。専門は古文です。
今年の春から、私はかねてからの希望だった、母校友引高校への転任が決まりました。
今とてもわくわくしています。早く私の後輩たちに、源氏物語を聞かせてやりたいと思っています。
それでは、私の現在についてのレポートはこれくらいにして、他のみんなの近況報告をしたいと思います。
「はい、皆さん!ニッコリ笑ってー・・・あ、あららら・・・」
「これ、スミレ!隼人!じっとしておれ!」
「すみませーん・・・写真屋さん・・・」
「いえ、いいんですよ。奥様、ご主人様。子供はこれぐらい元気なほうが・・・ね!」
老眼鏡をかけた写真屋はそう言うと柔和な表情で女の子と男の子を見つめた。
「それでは改めましてー、はい!」
パシャッ
サクラはつばめと結婚し、寿退職していた。今はスミレという女の子と、その弟の隼人の世話に明け暮れている。
「じゃ、これにハンコお願いしまーす。・・・あっ、それじゃどうも、ありがとうございましたー!」
ラム親衛隊ナンバー2だったパーマは、宅配便のセールスドライバーとなっていた。
今年の夏には子供が生まれる予定である。
それを知ったパーマは、今まで以上に張り切っている。というのもパーマの女房は大変な大飯食らいで、
つわりの時期が終わると同時にマタニティハイで前にも増して食うようになった。
子供が生まれた後の生活費はもちろんのこと、女房の食費も前にも増して稼がねばならなくなったのだ。
彼がこの仕事を選んだのも、基本給プラス荷物の個数に応じて歩合給という条件が気に入ったからだ。
「あーあ、好きで結婚したからいいけどさ・・・やっぱりつれえなあ・・・でも、がんばらなきゃな!よし!」
彼は伝票整理の合間に奥さんの写真を眺めた後、車を発進させ、次の家に向かった。
「いらっしゃいませ!ご注文をどうぞ!」
カクガリは老舗ラーメン店の店員になっていた。今は暖簾分けを目指して修行中の身である。
ちなみに彼には、真剣に交際している3歳年下の恋人がいる。店の常連客である。
「あれーー?これ計算合わないなー・・・」
チビは平凡なサラリーマンになっていた。企業戦士として、外回りとパソコンと向き合う毎日である。
そんな彼のところに、今年大学を卒業して入ったばかりの女の子がやってきた。
「あの、先輩・・・ここがよく分からないんですけど・・・」
「どれどれ・・・あっ、これはね・・・」
新人の頃はおどおどしていてよく職場の上司にどやされていたチビだったが、今では後輩に教えられるくらいになっていた。
「ありがとうございましたー、助かりました。ところで先輩、今日の昼休み、何か用事ありますか?」
「いや、別にないけど。でもどうして?」
「あの・・・もしよかったら、一緒にお食事でもどうですか?」
「えっ!?」
またひとつ、春の到来を思わせる出来事が起こった瞬間だった。
「・・・で、あるからしてこのカノッサの屈辱という事件は・・・」
そして隊長メガネはしのぶと同様、教師となっていた。担当は世界史と政治・経済である。
しのぶより1年早く友引高校に赴任し、教鞭を執っている。
「こら、そこ!私語は慎め!!」
教師になって始めて教師の苦労が分かった・・・最近の彼の口癖である。
ラムに対する入れ込みようは4人の中で一番強かった彼のことだから、一生独身を貫くかと思いきや、さにあらん。
時間が彼の心を癒したのか。彼もまた、同じ職場の女性教師と恋愛関係にあるのだ。
ちなみに彼女は数学の教師で、学校のマドンナといわれるほどの美人だが、理屈っぽいところはメガネとそっくりである。
「先せーい。質問がありまーす」
「何だ、板倉」
「麻上先生とはいつ結婚するんですかー?」
1人の男子生徒がこう言った瞬間、教室内は笑いの渦となった。
「バッ・・・バカものっ!な、何を言っとるんだ!そんなバカなこと考える暇があったら勉強しろ!」
メガネは顔を真っ赤にして怒鳴ったが、2人が付き合っていることは、校内中の生徒は皆うすうす感じていた。
ちなみに彼女の名前は麻上弥生。年はメガネと同じである。彼女も結婚には前向きである。
「ハーイ。今日の調理実習は、みんなでトンカツを作りまーす!男の子も遠慮しないで、みんな仲良く作りましょう!」
いまや家庭科は男女共修の時代である。そんな彼らに教鞭を執るのは、同じく友引高校家庭科教諭のランである。
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