Welcome To Another World(Chapter 18&19) (Page 3)
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お雪は一軒のブティックのショーウィンドウの前で立ち止まりそう言った。
「そお?だったらこのお店に入ってみましょうか。弁天の好みに合う服も見つかるかもしれないし・・・」
ランに促され、お雪は店に入った。
「ラン・・・アタイはよお、あのヒールが高くて、先っぽのとんがった靴・・・何て言うのかな・・・えーと・・・」
もじもじしながら弁天は言葉を思い出そうとした。
「パンプスのこと?」
「そう、それ!あれもイヤなんだよな・・・何とかならねえか?」
「だめよ!今弁天が履いているようなロングブーツなんて結婚式には不釣合いだわ!式の間だけでも我慢しなさいよ!」
「へーへー、分かったよ・・・」
ランにこう言われ、弁天もしぶしぶその店に入った。
その頃ラムは、結婚式場になる教会で、ウェディングドレスを試着していた。
「あなた本当に18歳?立派なバストしてるわねえー。これなら赤ちゃんが生まれたときも母乳がたっぷり出そう。
そのくせウェストはこんなにくびれて・・・」
「そんな・・・そんなに言われたら・・・恥ずかしいっちゃ・・・」
「何言ってんのよ?恥ずかしがることないじゃない!豊かな胸は、西洋女性の美の象徴なのよ。
ウェディングドレスを着るなら、胸は大きいほうがいいんだから。小さくて悩む人もいるのに、贅沢よ」
「だって・・・昔はウチ、気にしてたっちゃよ・・・同い年の女の子より大きくなるのが早かったから・・・
男の子からはじろじろ見られるし・・・女の子からは嫉妬されるし・・・
でもね・・・ダーリンが前に、言ってくれたっちゃ・・・ウチのこの大きな胸は、女性としてとっても魅力的だって」
「そうよ。彼の言うとおりよ。あなたはそれをもっと誇るべきだわ。
私もかれこれ、いろんな新婦さんの着付けをやらせていただいたけど、あなたほど手間のかからない女性は始めてだわ。
コルセットもほら、まるであなたのために誂えたようよ。はい!息すってー」
ラムの着付けを手伝う、いかにもこの道のベテランといったいでたちの中年女性がそう言った。
「おばさんもウェディングドレス、着たっちゃ?」
ラムはその女性に尋ねてみた。
「ええ。あなたと違ってナイスボディーじゃなかったから、着るのに苦労したけど。
それを着た時は、私ったらガラにもなく、私は幸せだ、世界で一番幸せなんだって思っちゃってたわねえ。
式の最中には、自分は絶対に泣かないと思ってたのに、やっぱり泣いちゃったわ」
その女性は自分の体験をうれしそうに話した。
「おばさん。やっぱりウチも、式の途中で、泣いちゃうのかな?」
ラムはまた尋ねてみた。
「あなたの選んだパートナーが間違いじゃなかったら、泣かないはずがないわ。
私の経験からいってね、式で泣かなかった女性は、泣いた女性よりもその後破局する確率が高いのよ」
それを聞いたラムは、ちょっと不安になった。
「ど、どうしよう?もしウチが泣かなかったら・・・」
「大丈夫よ!あなたはきっと涙を流すわ。私が保障する」
不安そうな顔になったラムを、女は安心させようと胸に手を当てて言った。
「どうしてそんなことがわかるっちゃ?」
「女の勘よ」
中年の女はしわの多い顔で微笑んだ。
「おーい、ラムー!今来たぞー」
そこに、突然あたるがドアをバタンと開けて入ってきた。しかし、ラムはまだ着替えの途中だった。
「キ・・・キャアーーー!!」
「ギャ・・・ギャアーーー!!」
ラムはかわいらしい悲鳴を上げて、あたるに電撃を食らわせた。あたるは悶絶してその場に倒れた。
「まったく・・・何が『キャー』じゃ!かわいい声出しやがって。普段からセミヌードで町を闊歩しとるくせに・・・
たかがランジェリー姿を見られたくらいで・・・でも、花嫁衣裳用の下着姿のあいつ、結構色っぽかったなあ・・・」
あたるは黒焦げになった姿で感慨深げにそう言った。それから数分後、ドアが再び開いた。
「もういいっちゃよ、ダーリン」
「んあ?」
ラムにそう言われて、あたるがラムのほうを振り返ると、そこには真っ白なウェディングドレスに包まれたラムの姿があった。
「あ・・・・・・ああ・・・・・・」
あたるはそのあまりの美しさに、言葉を失ってしまった。
「お・・・お前・・・本当にラムか・・・?」
ラムのほうを指差し、あたるは尋ねた。
「何言ってるっちゃ?ウチはウチに決まってるっちゃ!どうしたっちゃ?ダーリン・・・」
あたるの問いかけこそ、ラムには疑問だった。
「それはね、あんたがあんまりきれいになっちゃったから、新郎さん驚いてるのよ。うちの亭主もそうだった・・・」
その謎を、おばさんは説明した。
「ダーリンたら・・・そんなにウチきれいだっちゃ・・・?」
ラムは真っ赤にほてった両頬を手で押さえながら聞いた。
「い、いやー。お、お前をメイクした人って、そそそ、相当の腕前だなー。オレにこここ、こんな事言わせちまうんだから・・・」
あたるは決して素直に褒めなかった。
「ん、もう!素直じゃないんだから・・・」
ブスッとした表情でラムは言った。
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