Welcome To Another World(Chapter 18&19) (Page 2)
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もしかしたらその頃には父上たちも日本を離れて暮らすなどと言い出すかもしれんし・・・
もしかしたら日本には戻らんかもしれん。諸星、お前はいつ戻るんだ?」
「父さんの向こうでの再就職も決まったし、しばらくは向こうにいるつもりだ。
それからオレが独立したら・・・その後のことは考えとらん。
どっちで生活するのがオレとラムにとって一番いいのか、考えてから決めたいと思ってる」
あたるがこう答えた後、またしばらくの間2人は黙り込んだ。
「諸星・・・一度でいいから帰って来いよ。お前のふるさとは地球であり、この日本なんだからな。
お前が帰ってくる頃までには、地球ももっと開発が進んだ惑星にしておいてやるよ。このボクの力で」
先に静寂を破ったのは、面堂だった。
「頼もしいコメントだな。まあせいぜいがんばれよ。期待してるぜ。オレも向こうでがんばるよ。
面倒なことが一通り片付いたら、必ず地球に戻ってくるよ」
あたるはこう返事した。
「じゃあ、オレはこれで帰るぞ。今日は結婚式のリハーサルでな。早く行かないとあいつがうるさいから・・・」
「待て、諸星」
あたるがそこを立ち去ろうとしたとき、面堂は待ったをかけた。
「何だ・・・」
「もうお前とも会えんかもしれないからな・・・これはほんの気持ちだ・・・何も言わず受け取ってくれ」
面堂はそう言うと、ひょっとこの家紋の入った袋をあたるに差し出した。
「これは・・・?」
「じゃあな。今日の最終便でニューヨークに発つことになってるんだ。急ぐからな・・・」
あたるの問いかけを遮るように、面堂のそばに縄梯子が降りてきた。面堂はそれを掴み、するすると上に行ってしまった。
「面堂・・・」
あたるの視界から消え去り行くヘリコプターを眺めながら、あたるはそう呟いた。
(さらばだ諸星・・・ラムさんを幸せにしろよ。もしそれが実現したら、改めて結婚の祝いに行くからな)
ヘリの中で面堂はそう思った。あたるがもらった袋には「寿」ではなく、「前祝」と書いてあった。
あたるは袋を開けてみた。するとその中には大金と一緒に1枚の手紙が入っていた。
(この金はラムさんを幸せにするために使え。その条件さえ満たせばどんな使い方でもよい。
それと諸星。最後に一言言っておく。もしラムさんを泣かすようなことをしたら、
たとえお前がどこにいようとも必ずこのボクが駆けつけ、お前をたたっ斬る!)
手紙にはこう記されていた。
「フン・・・最後の最後まで、口うるさい奴だ・・・」
あたるは手紙を投げ捨てると、山を下りて教会に向かった。
一方その頃ラン、弁天、お雪は式で着る服を買うためにブティックを軒並み回っていた。
「なあ、ラン。アタイ、スカートだけは絶対にイヤだぜぇー。だってあれ穿くとなんかスースーするもんなあ」
弁天は2人に向かってぼやいた。
「分かってるわよ。パンツルックで素敵な服をあたしが探してあげる」
ランがこう返事した。
「ねえ、ラン。どうして白いドレスを私が着てはいけないの?さっきのお店で見たの、結構気に入ったのに・・・」
お雪はランに尋ねた。
「何でってお前、決まっとるやないか。お前まで白いドレス着たら、花嫁のラムが目立たんようになるやんけ。
ちいとばかりシャクやけどな、式の主役はラムやさかい、しゃーないと思って諦め」
ランはこのように説明した。結婚の早さで負けたのがちょっと悔しいランだった。
「でも諸星の奴、思い切った事しやがったよなあー。いきなり結婚宣言だもんなあー。
一体どういう心境の変化なんだろうな?あんなに嫌がってたのによお・・・」
道を歩きながら弁天はそう言った。彼女はランの持っているMDのことは知らない。
「多分、今度の戦争で命のはかなさというものを思い知ったからじゃないかしら?」
真相を知っているお雪がわざとらしく口を開いた。
「どういうこと?」
ランもわざとらしく尋ねた。
「ほら、今度の戦争では、大量の人々が一度に亡くなったでしょう?きっとご主人様、身にしみて感じたのよ。
人というものはいつ死ぬか分からない、それはラムも例外ではない・・・
だからご主人様、ラムが生きている今のうちに幸せを与えてあげようと思ったのよ」
お雪はもっともらしい嘘を堂々と話した。もっとも、それが本当に嘘であるかどうかはあたる本人にしか分からない。
それにしても、女の勘違いで付き合いが始まり、男の勘違いでゴールインするとはどういうカップルなのだろう。
「ほえー、そんなもんかね?まあラムの奴はあんなに喜んでいたことだし、それならそれでいいんだけどな」
お雪の嘘の憶測を聞いた後、弁天は納得して答えた。
「ラムちゃん・・・幸せになれるかしら・・・?」
「大丈夫よ。ご主人様がどれだけ優しいお方かは、あなただってあの時十分わかったでしょう?」
「それもそうね」
真相を知る2人は、お互い顔を突きつけてこう話した。
「あら、この青いドレス、いいわねぇー。これなら冷え性の私でも長時間着てられそう」

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