時は夢のように・・・。「第九話」 (Page 2)
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唯は、少し不満げだった。
俺は慌てて手を振り乱すと、
あたる「だ、だってさ、俺も男だし・・・その・・・わかるでしょ?」
唯「し、信用してるからさ、あたるさんのコト。」
あたる「う・・! でも友達とかにバレたら? 冷やかされるの、イヤでしょ?」
唯「も、もうバレてるもん。だからいいのっ。」
あたる「え・・ええっ?」
唯は目を伏せると、脇のクッションを、上からギューギュー押しながら、
唯「沙織ちゃんに話したら・・、すぐみんなに伝わって・・・女の子ばっかりだけど。」
あたる「な、なにか言われた?」
唯「う、うん・・。『あんた、恋愛かんけーはグズなんだから、それぐらいの状況の方がちょうどいいのよ』って、沙織ちゃんがね。私も
・・・そうかなって・・。」
例によって、語尾はゴニョゴニョ。なに言ってるのか聞き取れなかった。
唯ちゃん、ひょっとして俺と・・・?
すると唯は、目を合わせた途端、カーッと赤くなって、
唯「だからっ、この話はこれでおしまいっ! 私が文句ないんだからいいでしょっ?」
あたる「あっ・・ああ。そういうことなら・・。」
俺も赤くなって、目を伏せた。
うー、飛び上がりたいほど嬉しいんだけど、同じくらい恥ずかしいのはなんでだ?
その時、ある記憶が切り裂いた。
俺の誕生日の夜・・・公園で・・・好きだっちゃ・・・ラムっ!
突っ走る俺の感情に、急ブレーキをかけたのだ。
その時だった。
「おっはよ〜、だっちゃ。」
窓の方から聞きなれた声が聞こえた。あんまりタイミングが良すぎるんで、ギクッとした。
俺と唯は揃って、窓の方を見た。
ラムが、ニッコリ笑って、立っていた。
唯は急に笑顔を作ると、
唯「あっ、おはよーっラムさん。テンちゃんは?」
ラム「う、うん。ちょっと急用で、一旦、星に帰ったっちゃ。」
唯「あ・・、そうなんだ・・。」
ラム「テンちゃんに用事だっちゃ?」
唯「う、うんん。別に用事ってワケじゃないんだけど・・。あのね、二人とも来週の日曜日、あいてるっ?」
ラム「来週の日曜・・・ウチは、今のところ予定はないっちゃ。」
あたる「俺も特に・・・予定はないな。」
唯「実は、ウチの会社で、サマー・ブライダルフェアがあるの。」
ラム「さまーぶらいだるふぇあ?」
唯「そっ。模擬挙式とか、ウェディングドレスの試着とか・・。」
ラム「へぇーっ、ウェディングドレスも試着できるのけ? 素敵だっちゃねーっ!」
俺は、速攻で逃げ出したかった。模擬だろうがなんだろうが『結婚』なんて話に首を突っ込んだら、ラムが黙っちゃいない。
俺の心中では、絶対行くもんかと決心しかけていた。しかし、唯の次の言葉を聞いたら、
唯「・・・一流のシェフが来てくれて、試食用の料理をバイキング形式でたくさんだしてくれるんだ。もちろんタダだよ。」
あたる「そっかぁ、料理も出るんだ。バイキングだなんて、すごいな・・。」
唯は頷くと、恐る恐る俺を見つめ、
唯「・・・どお? 来れそう?」
あたる「もっちろ〜ん! 行くよ、行きます! 唯ちゃんに呼ばれれば、どこへでも!」
俺はドンと胸を叩いた。
ラム「ダーリンてば調子いいっちゃ。料理が食べたいだけなのは、ミエミエだっちゃよ〜だっ!」
ラムはプイッとそっぽを向いたが、唯はホッとしたように、胸の前で手を合わせると、
唯「よかった! じゃ、招待状あげるから、必ず来てねっ!」
*
それから一週間が過ぎた。
サマー・ブライダルフェア当日の昼。
あたる「へぇー、ここが唯ちゃんの仕事場かぁ!」
ラム「立派な建物だっちゃねぇ。」
一流ホテルみたいなお洒落なデザインのビルを見上げ、俺たちは口許をほころばせた。
ブライダルフェアは、既に始まっていたようだ。
入り口には花で作られたブーケが飾られていて、その奥は受付のカウンターがあった。既に何組かのカップルが受付しており、順番待ち
の状態だ。色とりどりのウェルカムボードがそこかしこに立てられ、まるで女子高の文化祭みたいだ。敷地から漂ってくる甘い匂いが、心
をくすぐる。
よーしよし、空も真っ青に晴れ渡ってるし、言うコトなしだな。
・・・後ろの二人を除いての話だけど。
面堂「・・ブライダルフェアなんて、なかなか来られるもんじゃないからなぁ。」
パーマ「うひょー、カップルばっかしかいねーなぁ。当たり前かぁ。」
面堂とパーマが、入り口を出入りする人たちを見ながら、勝手なコトを言った。
面堂は青いシャツで格好つけてるけど、パーマはノープリントの白いTシャツ、その上からオレンジ色の生地で、赤いチェックのはいっ
たシャツを羽織ってる。いつもと同じような格好だなぁ。
肩越しに振り返ったままで、俺はタメ息をついた。
あたる「・・・ラムは仕方ないとして、どうしておまえらが一緒なんだよ?」
パーマ「なぁに言ってんだよ、あたるが招待状くれたから、ここにいるんだろが。」
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