時は夢のように・・・。「第九話」 (Page 8)
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 ラムは、この上ないほどの満面の笑みで、俺を見る。
 でも、俺は、恥ずかしくて・・・やっぱり困る。つい、目を背けてしまうのだ。
 ラムがステージから試着室に戻るとき、係員のおばさんが、また声をかけた。
おばさん「ちょっとお待ちください。記念に写真を撮りますから、ご主人様ぁ〜?」
 おばさんが、俺に向かって声をかけてきた。
ラム「ご、ご主人様だなんて・・そんな、ウチら夫婦だけど、まだそこまで・・。」
 ラムは、顔が茹でたロブスターみたいに真っ赤で、ぐにゃぐにゃになってた。
あたる「ご、ご主人様ぁ?!!」
 俺が突然のことでびっくりしていると、ラムが俺のところにやってきて、俺の手を引っ張った。
ラム「ほらっ、ご主人様、記念撮影するっちゃ♪」
 まだ真っ赤な顔で、ラム。
 俺は、ホントのところ、ちょっとだけ抵抗があったけど、ラムは可愛いし・・・まいっか。
 以外にも、写真というのはインスタントカメラじゃなくて、本物のカメラマンが撮ってくれた。帰りまでには現像して、額にまで入れて
くれるらしい。なにより嬉しいのは、それがタダだってことだ。

                             *
 ラムの着替えが済んで、ふと、時計を見ると2時50分。
 確か、3時に中庭のチャペルで模擬挙式が見られるとか・・。
 面堂とパーマは、用事ができたとかで、たった今帰った。勝手についてきて、勝手に帰っていきやがって。まったく、なにしに来たんだ
あいつら・・・。
 俺とラムは急いで中庭のチャペルに向かった。

 中庭に出た俺たちは、チャペルへと続く小さな並木道を進んだ。
 俺たちの周りでは、ウキウキとしたかろやかな雰囲気であふれていた。
 スーツを着た女の人を、あちこで見かける。唯もこんなカンジで、一生懸命働いてんだろうな・・。
 小道の先に見えてきたのは、小さくもない立派な教会だった。
 その教会の前には、数組のカップルが、その時を待っていた。
 俺たちが、ちょうど教会の正面に着いた時だった。
 教会の正面ドアが開くと、スーツ姿の女性が現れて、丁寧にお辞儀した。
「本日は、お忙しいところお越しくださいまして、誠にありがとうございます。それではこれより、模擬挙式をとりおこないます。皆様、
どうぞ中へお進み下さい。」
 俺たちは、女性の示すままに、教会の中に入っていった。
 教会の中は、外のざわめきと切り離された、厳かな雰囲気だった。部屋の模様とかは、テレビとかでやってる結婚式のシーンに出てくる
そのまんまのデザインだ。ドアから入って、正面に祭壇があり、祭壇の脇には立派な蝋燭スタンド、大きなグランドピアノ、バージンロー
ドの両側に配置された参列者の椅子・・・ロード側にはリボンが列と列を結んでいる。ステンドグラスから日が差して、床に赤や緑の光が
こぼれ落ちてる。神聖な教会だからか、そんなところも、どことなく神秘的に感じてしまう。
 バージンロードは新婦しか歩けないところだそうで、左右の通路から進むようにと注意書きがあった。
 俺たちは、向かって右側通路を進み、一番前の列に陣取った。
 すると、神父の格好をしたおじさんが現れ、
神父「これより、模擬結婚式を執り行う。それでは最初に、新郎の入場です。みなさん大きな拍手で迎えてあげて下さい。」
 ドアが開いて、新郎が姿を現した。一斉に拍手が起こった。俺たちも大きな拍手で迎えた。
 スタッフに導かれて、右の通路から、俺たちの目の前までやってきた。正面を向く新郎の、すっと息を吸った音が聞こえた気がした。
 新郎が現れてから、女のコたちの目つきに変化があって、
「あの新郎役のヒト、カッコよくない?」
「背、高いよね。」
「なぁに、メチャメチャかっこいいんだけど。」
 俺たちの後ろの方で、ひそひそと女の子たちの声が聞こえてくる。
 なんだかなぁ・・・。ここにいるのはカップルだけじゃなかったのかよ?
神父「それでは、新婦の入場です。変わらぬ大きな拍手で迎えてあげて下さい。」
 グランドピアノで行進曲が奏でられるのと同時に、再びドアが開いた。今度は、さっきより盛大な拍手が巻き起こった。
 さっきラムが着たドレスに似てるけど、ちょっと大人っぽく、胸元が大きく開いたドレスだ。純白をベースにスパンコールやビーズなん
かで細かく刺繍され、レースをあしらったスカート部分はふんわりと広がっている。ボディラインも、ラムに負けないくらいのイイ感じで
、まさに、ドレスを着こなしてるって感じだ。頭にはティアラが配されていて、顔はベールで隠れててわからないけど、きっと美人に違い
ない。
 お父さん役のおじさんが、新婦の左側に付き添い、バージンロードを行進曲に合わせて、ゆっくり一歩一歩進んでいく。
 そして、新郎の傍まで来ると、お父さんがそっと新婦の手をとって、お父さんから新郎に新婦の手が託された。お父さんが着席すると、
新郎と新婦は揃って、正面に向き直り、一歩前進した。

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