時は夢のように・・・。「第九話」 (Page 5)
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「でもじゃないわよ、このグズ! 行けえ!」
「ちょっと沙織ちゃ・・・きゃっ!」
ドンって音がして、人垣をかきわけるようにして、押されたコが姿を現した。トレイをひっくり返しかけたものの、なんとか踏ん張る。
メイドに扮した唯である。
他のコの視線が気になったけど、とりあえず俺は片手を上げ、
あたる「や、やあ。」
ラム「頑張ってるっちゃ?」
唯「う、うん・・。」
俯いて、唯。顔が真っ赤だ。よほど恥ずかしいんだろう、脚を交差させモジモジしているが、スカートが極端に短いので、素肌の隠しよ
うがない。
俺もラムも、まともに会話したいんだけど、これだけ周りの目があるとなぁ。
すると唯の後ろから、ひょいと沙織ちゃんが顔を出して、
沙織「ほらぁ、飲み物、お出しして。」
唯「うっ、うん・・。」
頷くと、唯はおぼつかない手つきで、コーヒーと紅茶用カップと紅茶ポットをテーブルの上に置いた。
唯「どうぞ。」
あたる「ど、ども。」
ラム「あ、ありがとだっちゃ。」
俺たちは軽く頭を下げた。
唯「じゃ、じゃあね。」
急に唯が、きびすを返した。
しかし、すぐに後ろから、羽交い絞めにされた。
「こらぁ、待ちなさい! なによ、その挨拶は!!」
「そうよ、メインの楽しみ、なんだと思ってんの?!」
「ちゃんと紹介しなさいよね!」
両腕はもちろん、両足まで掴んでるから、女の子同士はすごい。こんな場合じゃなかったら、俺も加わりたいところだ。
唯「やーん、離してよ〜!」
そして女の子たちは全員して、
「往生際が悪いのよ、唯は! ジタバタするなぁ!」
唯「う・・。」
迫力に押され、唯は首をひそめた。さすがに諦めたのか、唯は赤い顔を背け、
唯「・・・こちら・・・その・・・諸星あたるさん。それと・・・こちらが、彼女のラムさん。お世話になってるお宅の息子さんで・・・
今のところ・・・一緒に・・・わたしと・・・もういいでしょっ?」
女の子たちは、弾かれたように顔を近づけると、
「じゃ、キミ・・・唯とひとつ屋根の下なんだ!」
「うそうそ、マジだったの!!」
「年下育ててるとはねぇ、唯もやるぅ!!」
「でも彼女がいたかぁ!」
「わかんないわよ〜、ね、唯とはどこまでいった? 白状しなさいっ!」
髪の長いコ、短いコ、メガネのコ・・、初めてお目にかかる唯の友達が、俺の鼻先数センチから好奇の眼差しを向けてくるんだからたま
んない。
あたる「かっ、勘弁してよ。俺は別に、そんな・・・。」
ラム「もうっ、いい加減にするっちゃ! ダーリンが唯に手出しするなんて絶対にありえない!!・・・とはいえないけどウチは信じてるっち
ゃ!!」
ラム・・・全然フォローになってない・・・。
彼女たちはニンマリ笑い合ったかと思うと、
「キミ、その様子だと、こういうのさせてもらってないでしょ?」
羽交い絞めにした唯の胸を、手のひらで左右からすくい上げたのだ。
服の上からエプロンをかけてるとはいえ、胸のラインが隠れるはずもない。ユサユサとまではいかないものの、唯のふくらみが、僅かに
揺れた。
唯「キャッ! ちょっ、ちょっと!!」
悲鳴をあげる唯だったが、彼女たちはさらに、
「じゃ、こういうのはどう?」
女のコたちは、エプロンの下に、手を突っ込んだ。
スカートがめくれる瞬間は、俺にはスローモーションに見えた。
白くてレースが細々と刺繍されたショーツが見えた時は、頭の中は、もう真っ白である。俺は瞬間的なパーになってしまった。
唯「キャーーッ!!」
唯は即座にスカートを押さえた。そして瞳を潤ませ、への字口で沙織ちゃんをねめつけた。
沙織「キャー! あの、なんていうか・・・今日はフェアだし、下着も色々選べますってコトで!」
唯「・・・もう信じらんない! みんなひどいわっ!」
唯は、涙目で怒ったように言うと、背を向けた。
薄暗い部屋の中で、華奢な体はあっという間に見えなくなった。
呆気にとられていたラムが、俺の方に向きかえって、眉間にしわを寄せた。
ラム「だ・・ダーリン、なんだっちゃその顔は?」
気がつかないうちに、俺の顔が変形していたのだ。それはもちろん、鼻の下がでろんでろんに伸びた状態にだ。
あたる「か、体は正直なもので・・。」
俺の話が終わる前に、ラムは、俺の胸ぐらを引っ掴むとぐいっと引き寄せて、ニッコリ笑った。
ラム「ダーリン、今見たことを記憶から消してあげるっちゃ。」
あたる「そ、それには及ば・・っ!!」
ドババババババババッッ!!!
またしても、言葉を言い切る前に、電撃が全身を突き抜けた。
ラム「ダーリン、まだ忘れないか?」
あたる「・・・わ・・・わ゛ずれ゛ま゛じだぁ゛・・・。」
ラムは、俺の襟首をパッと離す。“崩れ落ちる”の文字通りに俺は床に倒れこんだ。
唯を追いかければいいのに、女の子たちは再びニンマリと笑って俺に顔を寄せると、
「面白いわ、この二人! この男のコがすっごくイイ反応する!」
「キャハハ、ね、わたしのも見せたげよっか?」
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