Welcome To Another World(Chapter 18&19) (Page 1)
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Chapter 18 さらば友引町
「そうですか・・・あたるさんとラムさん、ラムさんの星に行っちゃうんですね・・・寂しくなりますね・・・」
因幡はカップに入ったコーヒーを一口飲んだ後、そう言った。しのぶと因幡は喫茶店の中にいた。
「ええ、今度の日曜に行われる結婚式が終わったら、そのまま・・・あたる君ももう退学届を出したわ。ラムもね」
寂しげな声でそう言うと、しのぶはストローでオレンジジュースをすすった。
「でも何でこんなに急に?そりゃあ18歳になったからって言ってしまえばそれまでですけど。
卒業するまで待っても遅くはないと思うんですがねえ、ボク的には」
「仕方ないじゃない・・・あたる君がそうするんだって決めたんだから・・・私たちがどうこう言うべきことじゃないわ」
しのぶがこう言うと、2人の間に一瞬静寂がもたらされた。
「あ、そういえばしのぶさん、今日学校行かなくてもいいんですか?」
因幡のこの問いかけで静寂は破られた。
「何だか今日はちょっとね・・・せっかく因幡さんも来てくれたことだし・・・」
しのぶはけだるそうな声で答えた。
「そうですか、すみません・・・何かボクが来たばっかりにしのぶさんをエスケープさせちゃったみたいで・・・」
申し訳なさそうな声で因幡は言った。
「いいのよ、気にしなくても。今日ははじめから行く気はなかったんだから」
しのぶは因幡を気遣うように言った。
「でも、結婚式かー。いいなー。ボクも早くしのぶさんと・・・あっ」
因幡は思わず口を滑らせた。
「えっ・・・・・・」
これを聞いてしのぶは思わずうつむいて真っ赤になった。2人とも焦った。
「と、ところで結婚式って日曜でしたっけ?ボクも参加しちゃっていいんですかねー?」
気まずくなった雰囲気を立て直そうと、コーヒーをスプーンでかき混ぜながら因幡はとってつけたように聞いた。
「え、ええ!大丈夫よ。ラムのアイデアで、オープンウエディング、つまり自由参加制度になってるの。
だから招待状がなくてもOKよ!」
しのぶも場を取り繕うように答えた。
「こら、しのぶ!学校にも行かず何をやっとるのじゃ?」
そこに突然、サクラが会話の中に入ってきた。しのぶはまた焦った。
「え・・・あ、その・・・これは・・・えへへ・・・」
しのぶは頭を掻きながら笑ってごまかそうとした。
「フッ、まあよいわ。実を言うと、今日は私も無断欠勤したのじゃからな。えらそうなことは言えん。
あー、そこのウェイトレス、ミートソース、カルボナーラ、ミックスピザ、海老ピラフそれぞれ二人前、
あっ、それからミックスサンドと食後のデザートにジャンボパフェ二人前じゃ!」
サクラにそう言われたウェイトレスは顔が引きつっていた。
「は・・・はい・・・かしこまりました」
ウェイトレスはいそいそとその場を離れた。
「アハハ・・・相変わらず快調ですね・・・サクラさん」
「そ、そうね・・・この人が食事を食べなくなったら、天変地異が起こるわよ」
因幡もしのぶもすでに胸焼けを感じていた。
「どうじゃ?私のおごりで何かオヌシらも食わんか?」
しのぶの横に腰掛けていたサクラが2人に聞くと、因幡の隣から突然チェリーが脈絡もなく現れた。
「ワシはマカロニグラタンがよいな・・・それとあんみつも・・・」
その場にいた3人は一瞬固まった。
その頃あたるは面堂とともに学校の近くの山の頂上の広場にいた。強い春風が吹いていた。
呼び出されたあたるがやって来て、それから2人ともしばらく黙っていた後、会話が始まった。
「・・・今はまだ、お前とラムさんの仲を認めることができない。今はな・・・
だから今は、結婚式にも出ることはできない・・・」
「参加は自由と言ったはずだ。出たくないなら出なくてもいい」
「出たくないのではない。あくまで今は出られないと言っているだけだ」
「どっちでもいいよ、オレには。お前な、そんなことを言いにここに呼び出したわけではあるまい?話せよ・・・」
「実はな、諸星・・・」
空にはジェット機が飛んでいた。面堂の声はあたるが聞き取るのがやっとだった。
面堂の言葉を聞いた瞬間、あたるは驚いた。
「学校を辞める・・・?なぜだ・・・」
「もうボクが友引高校にいる意味はなくなったからさ・・・庶民の文化も一通り体験できたし、
何より、ラムさんもお前もいない学校に、これ以上何を求めるというんだ?」
「それで、辞めた後はどうするつもりだ?」
「アメリカのハイスクールに編入することが決まったんだ。そこで勉強して現地の大学入りを目指す。
帝王学を勉強するにはそこが一番いいと思ったんだ」
「アメリカにはお前1人で行くのか?」
「ああ。最初は家族みんなで行こうという案もあったのだが、了子の奴が日本に残りたいと言ってな。
それでボク1人で・・・」
「そうか。で、日本にはいつ戻るつもりだ?」
「分からない・・・大学卒業の時点で戻るか・・・それから大学院に行くかもしれんし・・・

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