時は夢のように・・・。「最終話」 (Page 12)
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ドから、どんなミサイルや爆弾でも破壊は不可能だそうだ。銀河を通過するのは一瞬のことだけど、その衝撃波で銀河系の全ての星々はビ
リヤードの玉みたいに弾け飛んでしまう。銀河系の崩壊だ。回避は不能と判断した銀河に生存する者達は、首脳会議の結果、新たな銀河に
移住することにした・・・だそうだ。
 ラムは俺の目の前にふわりと着地すると、くるりと俺の方に向き返り、
ラム「父ちゃんはウチが地球に残ってもいいって言ってくれたっちゃ。でも・・・ウチ、よく考えたら良い所全然ないなぁて、思ったっち
   ゃ。唯は、料理も洗濯もお掃除だって上手で出来るのに・・。ウチときたら全然ダメで、これといって取り柄もないっちゃ。なんだ
   か情けなくって・・・。そんな時、唯とダーリンの話しを聞いたんだっちゃ。唯もダーリンの事が好きだった・・。それが分かった
   時に、ウチがダーリンの傍にいる理由が無くなってしまったように思えて・・。それで、悩んだ末に・・・さよならすることにした
   んだっちゃ。でも、ダーリンの事が好きだから、顔を見てたらきっと旅立てなくなっちゃう。だから、ダーリンがいない間に発とう
   と思ってたんだけど・・・。」
あたる「・・・そういう事情だったのか・・。」
 ふと顔を上げると我が家の玄関が見えた。話をしているうちに、俺たちは家の前に立っていた。
 ヘビーだ・・。前にも何度か、ラムがいなくなっちゃうかもしれない事件はあったけど、今度ばかりは状況が違う。
 ラムの悩みは俺が埋めてやるって、電話口で豪語しちゃったけど、俺のパワーじゃ、どう逆立ちしたって彗星は止められない。ラムに
「行くな」って言ったところで、ほんとに地球にいてくれるだろうか・・。妙な考えが頭によぎる。
 いやいや! 俺がラムを選んだことを後悔してない。
あたる「ラム、どこにも行くなよ。」
 ラムの目を見て言った。
ラム「・・・ダーリン。」
 ラムの目尻には涙が、今にもこぼれそうになった。それを手でぬぐって、ニッコリ笑った。
 そして俺たちは、揃って玄関の戸を開けた。
唯「おかえりっ、二人とも!」
 一足先に帰った唯が、玄関先で待っていたかの様に、微笑んで迎えてくれた。
 ふと、唯の足元を見ると、ボールみたいなガキがいて、
「ラムちゃん、おかえり〜。いつ帰ってくるかと思て、待ってたんやでぇ。」
ラム「テンちゃん、どうしたんだっちゃ? 先に父ちゃんの母船に行くって言ってたのに。」
テン「うん、おもろいことになったで、ラムちゃんにはよぉ知らせたくて、戻ってきたんや。それがなぁ、銀河に向かってる彗星な、軌道
   上の小惑星に衝突して進路が変わったんやて。角度的にも銀河にはかすめもせぇへんらしいねん。せやから移住計画は無くなったん
   やて、よかったなぁラムちゃん。」
ラム「・・・・・・」
唯「・・・・・・」
あたる「・・・・・・」
テン「なぁ、おもろいやろぉ。・・・って、どないしたねん? みんな怖い顔して。」
 勘弁してくれ・・。たのむよ。マジで。
 呆れてものも言えないくらいだった俺は、無言でジャリテンを引っ掴んだ。
あたる「どういう・・・ことだ?」
ラム「テンちゃん、計画が無くなったって、ほ、ホントだっちゃ?」
テン「な・・なんやねんイキナリ。ほ、ほんまやでぇ。」
あたる「絶対絶対絶対だなっ、おおうっ!! 絶対なんだなっ!!」
 俺はジャリテンをガクガク激しく揺さぶりながら、叫んだ。
 そんな俺の隣で、ラムはパアッと明るくなり、
ラム「よかったっちゃーっ!! もうホントによかったっちゃーっっ!! ダーリンと一緒にいられるっちゃよぉー!!」
 俺の背中に抱きついて、ラム。涙が目尻からこぼれ落ちてたけど、今度の涙は嬉し涙のはずだ。ホントに嬉しそうだった。
 そんな俺たちを、唯は微笑んで見ていた。
唯「・・・よかったね、ラムさん。ホントに良かった・・・。」
 ここで騒いでても仕方ないので、ひとまず冷静になるために、揃って茶の間に移動した。ジャリテンはフラフラしながら帰って行ったけ
どね。
 ダンボールを端に寄せて、テーブルを引っ張り出し、それを挟んで膝を突き合わせる。
 俺の前では、入れたばかりの紅茶が、湯気を立てていた。
 ラムはティーカップを置くと、ゆっくり顔を上げ、
ラム「唯、ダーリンも、今日はホントにありがとだっちゃ。ウチのために一生懸命になってくれて。唯のおかげで、ダーリンに好きって言
   ってもらえることができたっちゃ。心から感謝してるっちゃ。」
 ラムは俺と唯を交互に目配せして、ペコッと頭を下げた。
 そして顔を上げると、上目遣いで俺を見て、ホッペをピンク色に染めた。
あたる「う・・ご、ごほんっ! ま、まあアレだ、前にラムから告白も受けてたし、それに答えるのは当然っ。」
 ハッとして、俺は気負った。唯をフッてしまったという事実に、今さらながらに気付いたのだ。
 唯ちゃんの前で、この話はキツイ・・・。

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