時は夢のように・・・。「最終話」 (Page 6)
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たたでさえスポーティなバイクを、エアロパーツを変化させてさらにレーシーなカタチにチェンジさせたのだ。
キーシリンダーに鍵を入れ、セルを押してエンジンをかける。
ウォォンッ!!! ウォォーーン!!!
数回アクセルを回すと、近所にバイクの咆哮が響いた。
唯「回転数よし。ブースト安定OK。ついでにガソリン満タンよしっと。」
メットのバイザーを閉めて、ギアをローに入れた。
沙織「ホントに気を付けてね!! 事故だけは絶対ダメだからね!!」
心配そうな表情で、沙織。
唯「ごめんね、沙織ちゃん。留守番頼んだよ・・後でパフェ奢るから。」
沙織「はいはい。家のコトは任しといて。」
道路まではゆっくりと移動した。
門を出たところで左右を確認する。
唯「じゃ、行くよっ!」
腕時計のストップウォッチを押して、アクセルを回しクラッチを繋ぐ。
ギギャギャギャギャッッ!!!
タイヤが空回りした後、弾かれた様に加速する。
唯「ナビで近道を検索っ。」
『目的地をお話し下さい。』ナビが言った。
唯「京都府、○○グランドホテル。」
『ルートを探索しました。』
唯「練馬インターから高速か・・。よしっ。今日は道が空いてるし流れもイイから、高速は300から上にのせられるかも・・。」
迫り来るコーナーを次々とパスし、直線では間髪入れず加速する。
歩行者や車を持ち前のテクニックでかわしながら、一路京都を目指した。
*
唯が東京を出発したころ、俺は、実のところまだホテルにいた。
部屋の鍵をフロントに預けたまではよかったんだけど、出かけるのが面倒になって、ロビーのソファーに寝そべってた。
とはいっても、ずーっとこうしてうなだれてても仕方ないし・・。
そう思いながら、目を開けた時だった。
「今日もずいぶん滅入ってるのね。タメ息クン。」
俺の顔を覗きこむように、しのぶが立っていた。
あたる「よお。」
しのぶ「今日は自由行動の日よぉ、せっかく京都に来てるんだから、出かけないなんてもったいないわよ。」
しょぼくれた俺の顔を見ながら、しのぶが鼻をならした。
あたる「・・・ああ。」
しのぶっていつもこうだったな。俺のケツを引っ叩くようにハッパかけてくれるんだ。
頭をかきかき身体を起こすと、しのぶはニッコリ笑みを浮かべて、
しのぶ「わたし、祇園に行くんだけど・・・付き合ってくれない?」
あたる「しのぶからのデートの誘いじゃ、断れないな。・・・じゃ、行くか。」
しのぶ「デート? ばっかじゃない。」
冷やかな目で俺に目配せする。
京阪本線の京阪四条駅を出て東。
駅の構内を出るやいなや、古都を代表する華と雅の街が、俺たちの目の前に広がった。
ま、古都といっても、ちゃんと現代の建物がそこかしこにあるんだけども、見渡すと緑や瓦葺の屋根が散見できた。雰囲気は十分に出て
いる。
京都、祇園。
しのぶ「来ましたね〜。やっぱり好きだなぁ、祇園。」
観光客や、俺たちと似たような学生連中でごった返す四条通に立って、しのぶは言った。話を聞くかぎりじゃ、何回か来てんのかな。し
のぶは嬉しそうだった。
ここで暗くなっててもしょうがない。俺も背伸びし、
あたる「で、ご予定は?」
しのぶ「んー・・。まずは建仁寺かな? そこから八坂神社でしょ、あとは知恩院、青蓮院、そこから折り返して高円寺・・・、時間があれ
ば河原町まで出て、仏光寺も・・・。」
あたる「お寺の名前言われてもサッパリだ。ま、いいや、とにかく歩こう。」
しのぶ「よーし、じゃ、わたしについてきなさい!」
しのぶに腕を引っ張られ、俺は歩き出した。
それから俺たちは、インスタントカメラを片手に歩き回り、しのぶの言われるがままに記念写真を撮った。
・・・と言っても、シャッターを押してるのは俺。ツーショットなんてのはなかった。
まず建仁寺に行くと、しのぶは風神と雷神のレプリカ像の間に立ち、
しのぶ「どぉ? わたし、ちゃんと真ん中に入ってる?」
あたる「い〜感じ・・・動くなよぉ。」
パシャッ。
次に八坂神社では、凱旋門の日本版みたいな朱塗りの桜門の前で、
しのぶ「あーっ、なるべく通行人は入れないでっ!」
あたる「・・・無理言うなよ。」
パシャッ。
とにかくそんな調子で、俺たちは祇園の町並みを堪能した。土産物屋を見かければ、必ずと言っていいほど入り、いくつかの茶屋にも立
ち寄ってく。ま、根っからの遊び気分でフラフラしてたもんだから、予定をさほどこなさないうちに、空が赤くなってしまった。
そして・・・知恩院。
二段構えの屋根を持つ、日本最大の三門の下で、しのぶは、
しのぶ「ねえ、アングル大丈夫? 屋根が入ってなきゃ意味がないんだからねっ?」
あたる「そりゃいいけど・・・、離れすぎて写ってるのがしのぶだって分からなくなるぞ?」
しのぶ「いいのいいの、とにかく門が大事なんだから。」
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